『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』「登仙の巻」片岡仁左衛門の最期

歌舞伎役者 片岡仁左衛門(1992)

監督:羽田澄子

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

夜勤明けにポレポレ東中野で上映されている『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』の後半3部を一気観してきた。今回は「孫右衛門の巻」について書いていく。

『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』あらすじ

最終巻は、仁左衛門88歳から90歳までの最晩年を捉える。 舞台は、『楼門五三桐』の「山門」(1991年、京都 南座)、『江戸絵両国八景』の「荒川の佐吉」 (1992年、南座)、『元禄忠臣蔵』の「御浜御殿綱豊卿」(1992年、名古屋 御園座)、『菅原伝授手習鑑』の「車引」(1992年、南座)、『寿式三番叟』(1993年、東京 明治座柿落とし)、『寿曽 我対面』(1993年、明治座)、『鬼一法眼三略巻』の「奥庭」(1993年、南座)、そして最後の舞台となる『八陣守護城』の「湖水御座船」(1993年、南座)を映す。南座に初めてできたおおぜりで、石川五右衛門を演じる姿、明治座新装開場披露の「口上」での晴々しい姿、諸先輩から受け継いだ芸を残していく情熱など、最後まで芸に生きる様が映し出される。「芸談の会」では、「御浜御殿綱豊卿」について、70年前に帝劇で見た「奥庭」に出演する松本幸四郎のことなどを語る。結婚62年目のお祝いの様子や、仁左衛門を支え続けた喜代子夫人、 次女・蓉有子、五女・静香のインタビューも。

ポレポレ東中野より引用

片岡仁左衛門の最期

『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』最終章は2時間半にも及ぶ長尺なのだが、これほどまでに恐ろしい映画はないだろう。片岡仁左衛門も90歳になると身体のガタが末期となる。風邪をこじらせただけでも複数人がかりで彼の介抱をする。家族とのインタビューではバカンス映画さながらのバキバキにキマッたショットの中で、牧歌的な食事風景に挟む形で彼の不在を示唆するような空間が映し出される。

しかし、彼は不死鳥のように、脳梗塞から復活し舞台に立つ。確かにできる役は限られ、脇役を務めることもあるが、それでも一度舞台に立てば、あれほどにまでヨボヨボな振る舞いは消滅し、若返る。狂気とも言える豹変に畏怖するのである。果てしなく長い映画であったが、頑張って観た甲斐があった。これほどまでに恐ろしい映画とかつて出会ったことがあっただろうか。ここまでの人間の豹変はあっただろうか。2026年上半期に刻み込まれた強烈な一本であった。