『The Currents』タナトスに生きる

The Currents(2025)

監督:Milagros Mumenthaler
出演:Isabel Aimé González Sola、Esteban Bigliardi 、Emma Fayo Duarte etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アルゼンチン映画『The Currents』が面白いと聞きつけ、鑑賞してみた。なかなか変わった心理劇であった。

『The Currents』あらすじ

During a business trip to Geneva, Lina’s impulsive decision leads to perilous consequences. Back in Buenos Aires, she tries to bury her secret, but the dark past she left behind resurfaces to threaten her current life.
訳:ジュネーブへの出張中、リナの衝動的な決断が危険な事態を招く。ブエノスアイレスに戻った彼女は秘密を隠そうとするが、過去の暗い出来事が再び彼女の生活を脅かす。

タナトスに生きる

リナはスタイリストとして成功している。授賞式のためにスイスへ訪れるのだが、様子がおかしい。華やかな舞台にもかかわらず虚無の瞳をしている。そしてスイスの街を彷徨い遂に川へ飛び込む。彼女は溺死することはなかったが、この日を境に人が変わってしまう。夫や娘はリナの変化に気づく。

本作が興味深いのは、リナの視点で語られていることにある。人格変異を扱った作品はその理由、行動原理を知らぬ他者の目線から描かれ、分かっていた気になっていた相手の分からなさを形而上的に描いている。しかし、本作は当人ですらわからない恐怖を紐解くようにして描かれている。『Bulush』もそうだが、近年内省的テーマを扱った作品では仮想空間が演出として用いられる。本作でもゴーグルを被り、シュルレアリスム絵画を彷彿とさせる空間に身を置く場面を挟み、ラスト30分で映画のトーンを変えることによって人間心理の変化とそれを掴もうとする様を描き出している。

アンニュイで虚無に生きる者はタナトスを通じて自分を知る。それをアート映画として落とし込んだMilagros Mumenthalerの今後に注目である。