ドラマなふたり(2026)
The Drama
監督:クリストファー・ボルグリ
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ジョン・ウォーターズに賞賛された承認欲求によって女が暴走する『シック・オブ・マイセルフ』、あらゆる人の夢にニコラス・ケイジが現れる『ドリーム・シナリオ』と邪悪な映画を次々と発表し注目されているノルウェーの鬼才クリストファー・ボルグリ新作。
彼の最新作”The Drama”が邦題『ドラマなふたり』として2026年8月21日(金)より公開される。本作は、『トワイライト〜初恋〜』でブレイクして以降、『コズモポリス』や『ライトハウス』などアート映画にも意欲的に出演しているロバート・パティンソン、そして『スパイダーマン』シリーズでお馴染みのゼンデイヤが地獄のような結婚前夜を送るダークコメディ。
今回、マスコミ試写でひと足早く観させていただいたのでレビューしていく。
『ドラマなふたり』あらすじ
「スパイダーマン」シリーズのゼンデイヤと「THE BATMAN ザ・バットマン」のロバート・パティンソンがそれぞれ主演を務め、結婚式直前に暴露された“最悪の秘密”をきっかけに、完璧なカップルの関係が崩壊していく姿を描いた恋愛ドラマ。
ボストンのカフェで運命的な出会いをしたチャーリーとエマは、結婚も決まり幸せの絶頂にいた。結婚式まであと7日に迫った夜、付添人の親友夫妻と4人で食事していた彼らは、これまでに自分が犯した最悪の行いを告白することになる。軽い気持ちで始めたゲームだったが、エマの“最悪の秘密”に全員が衝撃を受け、チャーリーは彼女に別の顔があるのではないかと恐れを抱く。幸せな日々は一転して疑心暗鬼のどん底に陥るが、今さら結婚式の準備を止める訳にもいかず、ついに当日を迎えてしまう。
共演は3人姉妹バンド「HAIM」のメンバーで「ワン・バトル・アフター・アナザー」など俳優としても活躍するアラナ・ハイム、「憐れみの3章」のママドゥ・アティエ、「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」のヘイリー・ゲイツ。監督・脚本は「ドリーム・シナリオ」「シック・オブ・マイセルフ」など独自の世界観をもつ作品で注目を集めるノルウェー出身のクリストファー・ボルグリ。製作には「ミッドサマー」のアリ・アスター監督が名を連ねる。
結婚マイナス7日目、ドラマみたいな恋をした
本作は、スクリューボール・コメディとスランプもののクリシェを辿りながらも、数歩ズラすことによって独創的な物語となっている。ありそうでなかった地獄、コロンブスの卵に一本取られたとまず思う。
冒頭からクリストファー・ボルグリの疾走感ある厭な空間が展開される。
ロバート・パティンソン演じるチャーリーは、カフェで気になる女性を見つける。スッと彼女の席に歩み寄り、読んでいる本のタイトルをチェック。すかさずスマホで内容と適切な感想を調べ上げナンパ開始。饒舌に語りかけるチャーリー。しかし、彼女は気づかないように振る舞う。男の冷たい視線に耐えきれず、謝罪を始める。ようやく彼女は気がつく。実は右耳が聴こえなかったのだ。
「もう一回、やり直す?」
彼女のドラマティックな一言が酩酊的恋情を滾らせ、そのままイケイケどんどん結婚の階段を駆け上がることとなる。結婚式まであと7日に迫ったある日、友人たちと食事をするのだが、そこで彼女から《ある秘密》が明かされる。あまりにもドン引きするような秘密はチャーリーを当惑させてしまう(この秘密に関してはアメリカ社会にとってのタブーに触れるものとなっている)。
蓮實重彦は「ショットとは何か 歴史編」において、スクリューボール・コメディは婚姻の破棄の物語であると論じていた。しかし、現実において結婚の破棄は容易なのだろうか。本作は荒唐無稽でありながらも、「婚姻の破棄」という強制終了を選べず間延びした地獄の中で葛藤するリアリズムを描いた作品となっている。結婚式まであと7日。既に大金を支払ってしまったし、関係者との調整も行った。何よりも彼女の秘密は黒歴史に過ぎない。今は改心しているはずだ。それでも、怖い。思い返せば、最初から彼女に運命の手綱を握られており、予測不能な彼女の行動が自分に危害をおよぼすかもしれない。友人以外にその秘密が漏れた際のインパクトのデカい。どうすれば良いんだと彼はウジウジと苦悩するのである。
本作が興味深いのが、鬼才がよく手掛ける「作家のスランプもの」といったジャンルへと横滑りしていく点にある。チャーリーは結婚式でスピーチを考えないと行けない。一週間前まであれだけ饒舌にエマとの思い出を語っていたのに、言葉が出てこなくなってしまうのだ。書いたものは次々とDELETE長押しで削除していく。でもそこから全く言葉が出てこない。迫りくるXデー。行動のひとつひとつがエマに見透かされてしまっているし、友人からも「やめろ!」と言われる。未来の物語を編み込めないのはもちろん、過去の物語すら捨てたくなる。でも「婚姻の破棄」には踏み込めない。
映画は残酷にも疾風怒濤、時間と時間を切り取ってXデーを目指そうとするので、果たしてどうなってしまうのかと行った宙吊りのサスペンスにハラハラドキドキが止まらない。クリストファー・ボルグリの作劇が冴えわたる一本であった。
日本は2026年8月21日(金)より全国公開。











