それいけ!アンパンマン パンタンと約束の星(2026)
監督:矢野博之
出演:戸田恵子、中尾隆聖、土屋太鳳、、津田健次郎、りんたろー。etc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
note創作大賞2026の締め切りに追われておりあまり映画館へ行けてないのだが、アンパンマンの新作の公開日だったので朝一で観てきた。数年前に短編含めてアンパンマンの映画を全て鑑賞したアンパンマン映画ガチ勢なので、今年も映画館で観る必要があったからだ。しかし、雨天なためか、それともワールドカップ日本対スウェーデン戦があったためか、劇場はわたし一人の貸し切り上映であった。夜に日仏学院でリチャード・リンクレイター『ヌーヴェルヴァーグ』先行上映があるため、アニエス・ベーのゴダールTシャツを着ていったのだが、『急に具合が悪くなる』を観に来た客なのではと受付の人が不審な眼で、パネルと私を照らし合わせ、不安そうに「……要りますか?」と《おもちゃ王国》のリーフレットを渡してきた。「う~ん、要りません」と思わず低調に断ってしまい気まずい間が爆誕することとなった。気を取り直して映画を観たのだが、これが素晴らしい一本であった。
『それいけ!アンパンマン パンタンと約束の星』あらすじ
やなせたかし原作の国民的子ども向けアニメ「それいけ!アンパンマン」の劇場版37作目。「約束」を物語のキーワードに、新キャラクターであるレッサーパンダの旅人・パンタンが、旅の中で出会ったアンパンマン、クリームパンダら仲間たちと力を合わせ、困難に立ち向かっていく姿を描く。
昔、ある冒険家と交わした大切な約束を守るため、夜空に輝く虹の星にあるという宝物を探して旅をしていたレッサーパンダのパンタンは、旅の途中、ばいきんまんの赤ちゃんスプレーを浴び、子どもの姿になってしまう。アンパンマンたちに助けられたパンタンは、旅をする理由と、大切な約束を破ってしまったという後悔の気持ちを語るが、それを聞いたジャムおじさんに「約束は守ろうとする気持ちが大事」と勇気づけられ、気持ちを新たに再び旅に出る決意をする。そんなパンタンの旅にクリームパンダも同行し、目的地である虹の星を目指すが……。
ゲスト声優として土屋太鳳が出演しパンタン役を担当。お笑いコンビ「EXIT」のりんたろー。と兼近大樹も出演している。監督は、「それいけ!アンパンマン」テレビアニメ版の演出や劇場版も多数手がける矢野博之。脚本も同じく、テレビアニメ版や劇場版を数多く手がけてきた米村正二。
矢野博之集大成
本作は、アンパンマン映画を数多く手がけて来た矢野博之が『ドロリンとバケ~るカーニバル』以来4年ぶりにメガホンを取った作品となっている。脚本は『ばいきんまんとえほんのルルン』『勇気の花がひらくとき』『虹のピラミッド』と傑作回を多く手がけた米村正二となっている。つまり、今回のアンパンマン映画はベテラン陣による気合の入った一本なのだ。
アヴァンタイトルからパワフルなものとなっている。アンパンマン映画のクリシェとして、みみせんせい監修のコンサート会場にばいきんまんが襲撃するといったものがある。通常は曲を数曲挟む中でイベントが発生し、アンパンマンが成敗することでタイトルが表示される。しかし、本作ではこの過程を丁寧に描写している。まず、本作のテーマである「約束」を強調するかのようにクリームパンダがコンサートに遅刻し、罪悪感なき謝罪をメロンパンナにするバックヤードを魅せる。コンサートではまず1曲披露するのだが、すぐさまばいきんまん基地へと場面が転換し、コキンちゃんによるショーが行われる。ここで数曲展開し、幼児の好奇心を煽るわけだが、コキンちゃんの降臨により遥か彼方へ飛ばされたばいきんまんが、みみせんせいのコンサートを目撃する。自分だけが両サイドの蚊帳の外に追いやられた憂さを晴らすために、アイアンマンよろしく、空中でダダンダンと合体して襲撃するのである、ばいきんまんが何故市民を襲うのかといった背景を丁寧に描く。
また、本作はキラキラ星の涙に近いボスラッシュ映画となっている。近年ではあまり見られなかったスタイルなので興味深い。アンパンマンワールドにとって野生の怪獣軍団は対話不能の脅威であり、ばいきんまん以上に警戒しないといけない。領域侵犯しようものなら、アンパンマン側だろうとばいきんまん側だろうと容赦なく強力な攻撃を仕掛けてくる。映画では3体もの強敵が立ち憚るのだが、単なるボス戦に終わらせることはしない。パン譚が長年、約束を果たそうと徳を積んできた結果として命拾いするシーンが挿入されるのだ。パンタンの活動を見てきた民族が味方となって助けてくれる様を通じて約束の大切さを語るストーリーテリングの巧さに惹き込まれる。
また、映画としてもいくつかチャレンジングなことを行っており、パンタンの飛行船とばいきんまんのメカ、そしてアンパンマン号がドッグファイトするダイナミックなメカアクションを取り入れているのだ。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』とまでは言い過ぎだろうが、メカの内外を巧妙に切り分けたアクションは燃えるものがある。さらに、通常アンパンマン映画では、変身魔法による弱体化が定番となっているのだが、カレーパンマンとしょくぱんまんが変身魔法を重ね掛けされる非常に珍しい演出となっている。
アンパンマン映画の世界は令和になっても昭和的根性論の世界であり保守的なのだが、演出は進化し続けているのであった。










