『The Mysterious Gaze of the Flamingo』実際の暴力/位相をズラした寓話

The Mysterious Gaze of the Flamingo(2025)

監督:Diego Céspedes
出演:Tamara Cortés、Matías Catalán、Paula Dinamarca

評価:85点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

2025年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で最高賞を受賞した『The Mysterious Gaze of the Flamingo』がMUBIにて配信されたので観た。期待していた作品だったのだが、想像を遥かに超える傑作であった。

『The Mysterious Gaze of the Flamingo』あらすじ

1982. As an unknown disease begins to spread in a small mining town in the Chilean desert, gay men are accused of transmitting it through their eyes. Eleven-year-old Lidia, the only girl in the community, sets out in search of the truth.
訳:1982年。チリの砂漠にある小さな鉱山町で、正体不明の病気が蔓延し始め、ゲイの男性たちが目を通して病気を伝染させていると非難される。町で唯一の少女である11歳のリディアは、真実を求めて旅に出る。

IMDbより引用

実際の暴力/位相をズラした寓話

『シェーン』などの西部劇を彷彿とさせる、村に入り幻想的な形で村から離れていくフレームワークの中で始まる。オープニングタイトルではフィルムのタッチの中、鉱山からドロっと紅が流れる現実的でありながらもフィクショナルな質感が提示され、本作を構成する虚実の側面を捉えていく。

映画は鉱山にあるトランスジェンダーコミュニティにフォーカスが当たっている。この村にはトランスジェンダーの者が何人かいる。トランスフォビアからの暴力に晒されてはいるものの、夜になると酒場に鉱夫/トランスジェンダーが入り混じって親密な関係が生まれている。

そんな中、疫病が蔓延してしまう。どうやら眼差しによって感染するらしい。鉱夫たちはトランスジェンダーを見かけると目をそらすようになっていく。コミュニティの中心にいるフラミンゴはその特性を逆手に取り、いじめの加害者に対して眼差しを強要する。かと思えば、鉱夫と会話する時には目隠しをする。トランスジェンダーとしての独特な動きを会得していく。

本作はジャンル映画のような荒唐無稽でマジックリアリズムな演出によって構成されているが、トランスジェンダーがどのように社会と折り合いをつけて、時に抵抗していくのかといった本質に迫っている。男たちが眼差しを向けないのはある種、社会から見えないようにしていることである。一方で、暴力の対象となった時にトランスジェンダーの姿は現出する。だが、トランスジェンダーは都合の良い扱われ方に対して逆手の使い方で抵抗していく。設定がユニークで、しかしアイデアだけの空虚に留まらず堅実なショット、編集、演出でもって紡がれた『The Mysterious Gaze of the Flamingo』は長編デビュー作とは思えぬ力強さを感じました。