『プラダを着た悪魔2』生々しいPM、経営層の生態系

プラダを着た悪魔2(2026)
The Devil Wears Prada 2

監督:デヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチetc

評価:90点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

大人気お仕事映画『プラダを着た悪魔』。20年の時を超えて続編が公開された。『プラダを着た悪魔』はファッション誌「ヴォーグ」で編集長の助手を務めた経験のあるローレン・ワイズバーガーの実体験に基づくベストセラー小説の映画化なのだが、映画としてありそうで中々ない領域を扱っていることが功を奏してか、仕事に熱心な女性を中心とした不朽の名作となっている。映画は物語性を重視するあまり『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のような完全に犯罪となっている話や『ブラックベリー』のような壮絶な栄枯盛衰といった話がメインとなりがちである。しかし、実際のところ厳密にはコンプライアンス違反だったりするものの、村社会であったりグレーゾーンの中でもみ消される世界で足掻き続けるケースがほとんどである。YouTubeでは、ゾス系企業をはじめとしベンチャー企業がハードな仕事風景を公開しており需要があるのだが、映画でその領域を扱っているケースは稀である。故に『プラダを着た悪魔』は忘れ去られることのないお仕事映画となったのであろう。今回の続編では、より生々しくPM以上にしか見えない世界を潤沢に提示している。会議での鬼詰めシーンに関しては某ファッション系ベンチャー企業とほとんど変わらなず、私としても経験あるお仕事論トピックもあったりし上半期ベスト級に面白かった。

『プラダを着た悪魔2』あらすじ

アメリカの小説家ローレン・ワイズバーガーの同名ベストセラーを原作とする2006年の大ヒット映画「プラダを着た悪魔」の20年ぶりとなる続編。

ニューヨークの一流ファッション誌「ランウェイ」のカリスマ編集長として、ファッション業界の頂点に君臨するミランダ。かつてそのアシスタントに採用され、厳しく完璧主義な彼女のもとで奮闘する日々を過ごしたアンドレアは、現在は報道記者として活躍していた。そんなある日、ミランダとその右腕ナイジェルが危機に直面していることを知ったアンドレアは、特集エディターとして「ランウェイ」編集部に舞い戻る。さらに、アシスタント時代の同僚エミリーとも再会するが、彼女はラグジュアリーブランドの幹部として「ランウェイ」存続の鍵を握る存在となっていた。それぞれの夢と野望がぶつかり合うなか、事態は思わぬ方向へと展開していく。

キャストにはミランダ役のメリル・ストリープ、アンドレア役のアン・ハサウェイ、エミリー役のエミリー・ブラント、ナイジェル役のスタンリー・トゥッチら前作のメンバーが再結集。前作に引き続きデビッド・フランケルが監督、アライン・ブロッシュ・マッケンナが脚本を手がけた。

映画.comより引用

生々しいPM、経営層の生態系

本作は、修羅場映画さながらのスタイリッシュさで炎上と人員確保の物語が展開される。前作にてアンディがブルーのベルトを冷笑したことでミランダによるファッションが俗になるまでのプロセス講義が始まったのだが、冒頭でその結果が軽やかに提示される。取引先を間違えて炎上記事がバラまかれた「ランウェイ」、レッドカーペットを歩きながらミランダとナイジェルはニコやかに、悟られないようにヒリついた作戦会議が行われる。そして、ジャーナリストとして名声を上げたもののクビとなったアンディが呼び戻される。すぐさま、関係企業へ謝罪周りに行くのだが、そこでかつてのライバル・エミリーとエンカウントして、彼女は憎悪を込めながら不利な条件を突き付ける。あれだけ輝かしかった「ランウェイ」も時代の流れでギュられてしまっており、ロケの日数は減らされ、ミランダレベルの人でもミラノへはエコノミークラスで出張することとなる。クソなコンサルタントの介入によって窮地に立たされる中で打開点を見出そうとする。

私も映画ライターとして媒体に所属していたこともあり、バズる低俗な記事と硬派で意義のある記事との間で葛藤する編集部の気持ちに胸が締め付けられる。そして、アンディはシゴデキ社員に成長したものの、経営層に近いポジションが求められる動きに直面する。彼女は「ランウェイ」とミランダに尽くそうとフィードバックを求めるのだが、ナイジェルに「承認欲求の塊かよ、フィードバックという飴玉が欲しいんか」とキレられる。要は経営層レベルになると、正論と矛盾した正解なき世界の中でいかに自分を貫き、組織を導けるかが重要なのである。だから、変な謙遜とかフィードバックを貰おうとする姿勢は命取りとなるのだ。結果だけがすべてであり、高慢さや意地悪さも求められる。

別の記事で書くが、こうした殺伐とした世界を象徴させるために世界遺産レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院が使われている小粋さも含めて素晴らしい続編であった。