『ALPHA』感染症と孤独

ALPHA(2025)

監督:ジュリア・デュクルノー
出演:エマ・マッキー、ゴルシフテ・ファラハニ、タハール・ラヒム、フィネガン・オールドフィールド、メリッサ・ボロスetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌ国際映画祭に出品されたジュリア・デュクルノー新作『ALPHA』を観た。彼女は一貫して、グロテスクなまでの肉体変化を通じて孤独や閉塞感を描き続けている監督である。ボディ・ホラーは肉体の変化を通じて社会と個人との距離感を描く最も形而上である利点を活かしたジャンルなのだが、ジュリア・デュクルノーはそのジャンルを見事にものにし、毎回強烈な世界を描いていく。彼女が好きなテーマではないとは思うが「ドカ食いダイスキ! もちづきさん」を実写化するなら是非ともメガホンを取ってほしいものがある。

『ALPHA』あらすじ

Alpha, a troubled 13-year-old, lives with her single mom. Their world collapses the day Alpha returns from school with a tattoo on her arm.
訳:問題を抱えた13歳の少女アルファは、シングルマザーの母親と暮らしている。ある日、アルファが腕にタトゥーを入れて学校から帰ってきたことで、二人の世界は崩れ去ってしまう。

IMDbより引用

感染症と孤独

コロナ禍をどのように表現するか?

20年代に入り早々、人類に襲い掛かった厄災はフィクションを凌駕する世界が現実を覆いつくした。映画監督は制約も込みでどのようにこの時代を描けばよいのかといったことを悩みながら作品を放っていったのだが、時期尚早なのかイマイチ傑作が出てこない。本作はそのような感染症を扱った映画の中では比較的成功している方であろう。

主人公のアルファは刺青を入れるのだが、感染症の予兆が現れる。この世界では段々と肉体が石化する難病が流行しており、母親はそれを治療する医者である。アルファの予兆は学校に不安をもたらす。先生のパートナーが石化病に感染したことから、アルファは病人だと学校でイジメに遭う。一方、アルファの家に叔父のアミンが転がり込む。彼は薬物中毒者であり、治療のために家にやってきたのだが、再発してはアルファの母に蘇生させられる状況が続いていた。

母親はふたりの介護、母としてまた医者としてふたりを守らねばといった感情が孤独と閉塞感を増幅させていく。

本作を観た時、『どうすればよかったか?』を思い出した。医者の家庭が介護の当事者になった時に、医者であるプライドが関係性を歪めてしまい、家庭が崩壊する。この感覚をボディホラーとしてやるとどうなるのか。映画はアルファの幻視、現実的な肉体崩壊を交互に描くことで行き場のない不安を表現している。この表現のグロテスクさが異様であり、介護中に背中が石化しボロボロと崩れ落ち、悲鳴をあげる。真実を伝えるかどうか迷いながらとりあえず「大丈夫だから」とテーピングする生々しさに圧倒された。

また、アルファがプールを紅に染めクラスメートが逃げていく場面があるのだが、もしかすると下痢をプールにぶちまけてしまうおっさんの有名なYouTube動画を参考にしたのかもしれないと思い面白く感じた。

とはいえ、『TITANE/チタン』と比べると想定の範囲を超えなかった印象が強かった。