ポスト・モーテム(2010)
Post Mortem
監督:パブロ・ラライン
出演:アルフレード・カストロ、アントニア・セヘルス、ハイメ・バデル、アンパロ・ノゲラetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
Netflixでパブロ・ラライン新作『伯爵』を観て、チリ軍部クーデターのことが気になった。ちょうど、MUBIにて同監督がこの事件を描いた『ポスト・モーテム』があったので観た。
『ポスト・モーテム』あらすじ
In Chile, 1973, during the last days of Salvador Allende’s presidency, an employee at a Morgue’s recording office falls for a burlesque dancer who mysteriously disappears.
訳:1973年、サルバドール・アジェンデ政権末期のチリで、モルグの記録事務所の従業員が、謎の失踪を遂げたバーレスク・ダンサーと恋に落ちる。
チリの9.11、その時何があったのか?
本作はアジェンデ政権崩壊直前〜直後を描いているのだが、事件そのものはフレームから外そうとしている。序盤、楽屋に忍び込みダンサーと恋仲になった男は車を走らせる。するとデモ隊と対面する。しかし、男にとってそれは日常の一部として映し出されるだけで物語の中には入ってこない。ひたすら男の日常が描かれていくのだ。そうこうしていると1973年9月11日のクーデター当日となる。外では強烈な爆撃音や悲鳴が響き渡るが、それ自体はカメラに映らないようになっている。映されるのは膨大な死体の山である。彼女はアジェンデ政権派だったため失踪。その面影を探しながら瓦礫の山を積み上げる。死体解剖と同じように心を無にして面影を探していく姿は痛々しい。パブロ・ララインは『伯爵』や『NO』もそうだが、ピノチェト政権をユニークな角度から撮る監督のように思える。確かに正面からピノチェト政権を描く監督にはパトリシオ・グスマンがいる。彼とは異なる角度からチリの歴史を見つめてみようとする意志を感じたのであった。
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※IMDbより画像引用