【東京国際映画祭】『ロクサナ』面倒臭過ぎるイラン社会へようこそ

ロクサナ(2023)
Roxana

監督:パルヴィズ・シャーバズィ
出演:ヤスナ・ミルターマスブ、マーサ・アクバルアバディ、マエデー・ターマスビetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第36回東京国際映画祭コンペティション作品。ヴィジュアルからして重い閉塞感ものだと思っていたら、これが意外。コメディだった。

『ロクサナ』あらすじ

『南から来た少年』(97)で東京国際映画祭ヤングシネマ・ゴールド賞を受賞したシャーバズィの最新作。魅力的な女性と出会った青年が巻き込まれる出来事を通してイランの若者たちが置かれた不安定な状況を描き出す。

※第36回東京国際映画祭サイトより引用

面倒臭過ぎるイラン社会へようこそ

主人公はニートに限りなく近い男。親に怒られ、テキトーに仕事場に行って時間を潰している。そんな中、車のガラスが破られて結婚式の映像データの入ったハードディスクがなくなる事件が発生する。女に頼まれ、ハードディスクの行方を探しながら、彼女の仕事にも同行する。

イラン社会の面倒臭さを皮肉った本作は、ニート男の不条理を通じて黒い笑いが生まれてくる。簡単に警察に捕まり、折角資金繰りで入手した500米国ドルも没収されてしまう中で、簡単に人は裏切る。例えば、車の中に酒が入っていたことが発覚し、警察から取り調べを受ける中で女に裏切られ牢獄に入れられてしまう。

なんとか奪われたバックを取り返しにおっさんのいる場所へ行くとハードディスクがなく、闇市のようなところへ出向く必要がある。全てが盥回し。なので生産性も上がらず金も稼げない。その結果、借金取りをなんとかして回避しようとする、借金取り側からしたら面倒なことが起こるのだ。

ひたすら面倒臭い展開に巻き込まれる本作は少々、とっ散らかった脚本にも思えたが、それこそが本作の狙いであろう。

第36回東京国際映画祭関連記事

【東京国際映画祭】『開拓者たち』マカロニウエスタンで南米史を撃つ
【東京国際映画祭】『湖の紛れもなき事実』ラヴ・ディアスの超スローモーション刑事もの
【東京国際映画祭】『正欲』YouTube時代にクローネンバーグ『クラッシュ』が作られたら……
【東京国際映画祭】『鳥たちへの説教』バイダロフ「説教」煉獄編
【東京国際映画祭】『曖昧な楽園』曖昧な地獄
【東京国際映画祭】『左手に気をつけろ』映画を知ると映画の外側に行けなくなる
【東京国際映画祭】『小学校~それは小さな社会~』解体新書:日本の小学校
【東京国際映画祭】『西湖畔に生きる』グー・シャオガン、スピリチュアルなスコセッシ説
【東京国際映画祭】『わたくしどもは。』豊穣な空間で我思う
【第36回東京国際映画祭】『駒田蒸留所へようこそ』ウイスキー復活への道
【東京国際映画祭】『私たちの世界』コソボ、大学には入ったけれど

※第36回東京国際映画祭サイトより画像引用