【第36回東京国際映画祭】『駒田蒸留所へようこそ』ウイスキー復活への道

駒田蒸留所へようこそ(2023)

監督:吉原正行
出演:早見沙織、小野賢章、内田真礼、細谷佳正etc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本においてアニメは独特な位置付けを持っており、アニメであれば『君たちはどう生きるか』やエヴァンゲリオンのような形而上的テーマな作品であっても老若男女受容する傾向がある。逆手に取れば、どんなにマニアックだったり高度なテーマであってもアニメを用いることで興味関心を抱いてもらえるといえる。自分がアニメの皮を被りコアな映画情報を発信するのはその日本人の傾向をハックしているともいえる訳だが、ここに来て興味深い題材の作品が現れた。それが『駒田蒸留所へようこそ』である。

『駒田蒸留所へようこそ』あらすじ

世界からも注目されるジャパニーズウイスキーを題材に、崖っぷち蒸留所を再興させるべく奮闘する女性社長と新米編集者が、家族の絆をつなぐ幻のウイスキーの復活を目指す姿を描いた長編アニメーション。

亡き父の跡を継ぎ、家業である「駒田蒸留所」の社長に就任した駒田琉生。経営難に陥った蒸留所の立て直しを図る彼女は、災害の影響で製造できなくなった幻のウイスキー「KOMA」の復活を実現させるべく奮闘する日々を送っていた。そんなある日、自分が本当にやりたいことを見つけられず転職を繰り返してきたニュースサイトの記者・高橋光太郎が、駒田蒸留所を取材に訪れる。

琉生役で早見沙織、光太郎役で小野賢章、蒸留所の広報担当で琉生の幼なじみ・河端朋子役で内田真礼、ニュースサイトの編集長・安元広志役で細谷佳正が声の出演。「花咲くいろは」「SHIROBAKO」のP.A.WORKSがアニメーション制作を手がけた。

※映画.comより引用

ウイスキー復活への道

扱うテーマはウイスキーの製造工程なのである。新米web記者である高橋の目線から、災害により失われたウイスキーを復活させようと奮闘する蒸留所を追っている。ウイスキー初心者の目線から蒸留所と醸造所の違いに始まり、ブレンド過程の難しさなどを分かりやすく表現している。ある意味、シンプルで予定調和なのだが、堅実に反復伏線を張っていき、終盤にかけてお仕事映画として盛り上げていく。本作の本質が「あなたの知らないウイスキーの世界」なので、変に気を衒うのではなく、ひとつのお仕事映画として、やりがいを見出せない者、やりがいを見出した者、その先と円環構造としての「継承」を魅せていく。これが美しく、観終わった後にウイスキーを飲みたくなる、興味が湧いてくるものがあった。

映像面でいえば、若干、作画コストのせいか大掛かりな樽に酒を詰める、混ぜるといった運動を回避しているなと思いつつも、ブランデー工程でのたくさん並んだボトルの微妙な色彩表現に拘っており、そこでリカバリーできていたなと感じた。

※映画.comより画像引用