リリス(1964)
LILITH
評価：80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
カイエ・デュ・シネマベストに選出されたサイコスリラー『リリス』がAmazon Prime Videoにてレンタル配信となっていたので観た。これがめちゃくちゃ怖かった。
カイエ・デュ・シネマベスト1965
1.気狂いピエロ』
2.熊座の淡き星影
3.冬の光
4.パリところどころ
5.アルファヴィル
6.リリス
7.ショック集団
8.底抜け男性No.1
9.奇跡の丘
10.幸福
『リリス』あらすじ
退役軍人のビンセントは、地元の町にある病院で作業療法士を目指し働き始める。そこに患者として入院しているリリスという女性に接していくうちに、彼女の妖艶で不思議な魅力の虜となっていく。やがて現実と空想の区別がつかなくなっていったビンセントは・・・。
あなたは段々夢中になる……
とある精神病院に療法士ヴィンセント・ブルースがやってくる。彼は統合失調症のリリス・アーサーを担当することになる。彼女は一見すると、普通の女に見える。絵の才能もあるようだ。「他の患者とは違って彼女は幸福そうに見える」と分析するのだが、次第に雲行きが怪しくなってくる。彼女に恋心を抱いているメガネ男がいる。彼を弄ぶように「この草を食って!」と試したり、筆を激流の川へと投げ込み取ってこさせようとする。冷静沈着に彼女との距離を取るヴィンセントだったが、段々と彼女にのめり込んでいくこととなる。
本作はどこか不気味な空間作りに長けている。健常者の人間の行動は
1.明確な行動
2.不明瞭な行動
をミックスさせたものとなっている。例えば、歩いている時に、向かう場所はある程度明確だが、手の動きを意識しておらず不明瞭な動きが混じっている。
それに対して精神病院にいる者の行動は極端である。バルコニーに静止した者がいるが、ある程度近づくとまるでポケモンの戦闘シーンかのようにパッと気づく。ロボットのように静と動が分離した行為を魅せるのだ。
その2つの人間行動の中にリリスを配置する。彼女の動きは前者のような者に見える。だが、明確に男を弄ぶに振り切っているともいえ、上記のロジックでいえば後者の行動となる。この一見すると健常者っぽい動きだが、よくよく見ると危険な病人である動きを体現したジーン・セバーグの演技が素晴らしい。
そして本作は、異常に見える行為でも、言語化できないような空気感を持った時に切り捨てられてしまい、それを独りで抱えることによって大惨事に陥っていく過程を映画的に魅せている。特に顕著なのは、煙立ち込める空間の中、リリスに言い寄られる場面。この不思議で危険な空気感を、文書と説明で上長に報告しようとする場面があるが上手く伝わらず放置されてしまう。この映画にとって最も怖い場面であろう。
※MUBIより画像引用
