【アマプラ】『サントVSゾンビ』独特なサント映画文化に触れる

サント VS ゾンビ(1962)
Santo contra los zombies

監督:ベニート・アラズラキ
出演:サント、アルマンド・シルヴェストレ、ハイメ・フェルナンデス、ダゴベルト・ロドリゲス、アーマ・セラーノetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、MUBIでメキシコのB級映画『ダークナイト・レディ』を観たところ、謎に主張の激しいプロレス描写があった。メキシコにはサント映画というジャンルが存在する。メキシコのプロレス「ルチャ・リブレ」を題材にしたジャンルで1950~1980年代にかけて盛り上がった。その代表に人気覆面レスラー・サントが出演したものがあり50本近い作品が作られた。サント映画というジャンルを築き上げた訳だ。ひょっとして『ダークナイト・レディ』におけるプロレス描写は、サント映画の延長線上にあるのではと思ってアマプラで『サントVSゾンビ』を観た。これがドンピシャだった。

『サントVSゾンビ』あらすじ

覆面ヒーローレスラーのサントが死者を蘇らせて罪を犯す事で街を脅かしている狂科学者を阻止する。

Amazon Prime Videoより引用

独特なサント映画文化に触れる

本作が異質なのは、本編がおまけのような扱いを受けているところにある。冒頭10分近く、プロレスのシーンが映し出される。そしてゾンビ絡みの問題が発生するのだが、気を緩めれば、再び試合の場面に戻る。試合会場にゾンビが乱入するみたいなこともなく、ただただサントの活躍が生の試合として提示されるのだ。恐らく、サント映画はプロレスにおけるドラマにプラスアルファして映画ならではの虚構の戦いを付与させたもの。カレーに福神漬けを添える感覚で映画としての物語を与えたのであろう。生でサントの試合が見られない人のために、失われた生試合の臨場感を補う要素として映画が付与されているといった見方ができるであろう。

さて、本作はゾンビ映画ではあるがロメロ全盛期前の作品なので『私はゾンビと歩いた!』と同じハイチ系ゾンビである。なので我々の想像するゾンビ像とは異なっており、どちらかというとボディ・スナッチャー系映画に出てくるような、人間味を失いロボットさながらの動きをする存在として描かれている。耐久力は高く、銃によるダメージはほとんど与えられない。また動きは一定した遅さを保っている。機動力がないにもかかわらず、人間側は間抜けなほど静止してゾンビに捕まっている点が滑稽だ。

全体的に、プロレスの動きの速さに対して物語の進行は遅いので歪に感じる。しかし、終盤でゾンビたちが一斉に燃える場面の魅せ方には惹かれるものがあった。