『地獄の警備員』松重豊が近づくよゆっくりゆっくり

地獄の警備員(1992)

監督:黒沢清
出演:松重豊、クノ真季子(久野真紀子)、大杉漣etc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime Videoで黒沢清の『地獄の警備員』が配信されていたので観た。黒沢清監督作は毎回よくわからないイメージがあるのだが、これはめちゃくちゃ面白かった。

『地獄の警備員』あらすじ

「スパイの妻 劇場版」でベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督が、1992年に手がけたバイオレンスホラー。バブル景気で急成長を遂げた総合商社に、絵画取引担当の秋子と警備員の富士丸という2人の新人が入社した。元力士の富士丸は兄弟子とその愛人を殺害したが、精神鑑定の結果無罪となった要注意人物だ。秋子が慣れない仕事に追われる一方で、警備室では目を覆うほどの惨劇が幕を開けていた……。これが映画デビュー作の松重豊が謎めいた凶暴な警備員を演じ、大杉漣、長谷川初範、内藤剛志が共演。1980年代に生まれた伝説的映画製作会社ディレクターズ・カンパニーの最後期の作品。2021年2月13日から、新宿K’s cinemaにてデジタルリマスター版をリバイバル上映。

映画.comより引用

松重豊が近づくよゆっくりゆっくり

総合商社に入社することとなった女。しかし、彼女が入るビルには不穏な気配が漂っていた。ねっとりと間合いを詰めてくる警備員。個室に連れて行き、イチモツを見せようとするセクハラ上司。営業中にもかかわらずガランと異様にスペースが広い空間。違和感を感じつつ、仕事のキャッチアップをしていく彼女。一方で、警備室にも新入社員が入る。しかし、彼は殺人マシンだった。ひとりまたひとりと血祭りにあげられ、その矛先は女へにじり寄っていくのであった。

本作は女と警備員の2パートを手繰り寄せながら、徐々にビルが殺戮の現場へと豹変していく様子を描いている。なんといっても空間の演出が素晴らしく、エレベーターを待つ人の無機質な感じ。ヤバい警備員を探そうとすると、良いところでモブの人とすれ違うスリル。会社の暗部に向かえば向かうほど、嫌な予感を感じさせる仄暗さが広がってくる様子がたまらない。そして何と言っても、松重豊の淡々と人を殺めていく姿の面白さ。彼は今となっては、フードファイターなイメージが強いが、こんなにも冷徹な殺人鬼を演じられるのかと感動した。

※映画.comより画像引用