『CLOSE/クロース』ルーカス・ドンはクローズアップがお好き

CLOSE/クロース(2022)
CLOSE

監督:ルーカス・ドン
出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近ベルギー映画が熱い。日本でもシャンタル・アケルマン特集が組まれたり、ダルデンヌ兄弟の新作『トリとロキタ』が話題になっていたりするが、国際的にも『Ghost Tropic』のBas Devosや『プレイグラウンド』のローラ・ワンデルといった監督が注目を集め、ベルギー映画が今熱いことになっている。第95回アカデミー賞国際長編映画賞のノミネートに選出された『CLOSE/クロース』もベルギー映画である。監督は『Girl/ガール』で注目されたルーカス・ドン。個人的に『Girl/ガール』が全く合わなかったため、本作も心配していた。その予感は的中することとなった。

『CLOSE/クロース』あらすじ

トランスジェンダーの主人公がバレリーナを目指す姿を描いた「Girl ガール」でカンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン監督が、13歳の2人の少年に起こる関係の変化を描いた長編第2作。

13歳のレオとレミは、学校でも放課後でも一緒に時間を過ごす大親友だった。しかし、ある時、2人の親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に戸惑い、そっけない態度をとってしまう。そのせいで気まずい雰囲気になる中、2人は些細なことで大ゲンカをしてしまい……。

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、グランプリを受賞(クレール・ドゥニの「Stars at Noon」と同時受賞)。第80回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞、第95回アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされた。

映画.comより引用

ルーカス・ドンはクローズアップがお好き

親友以上の関係にあった少年レオとレミが、女子生徒に同性愛を疑われたことから関係が決裂していくドラマ。アイスホッケー部を使った、心理的距離描写。肉体的近さが、部活やバスの窓といった障壁によりどんどん遠いものへとなっていく描写には作劇の上手さを感じるも、ルーカス・ドンの画作りがどうも好きになれない。『Girl/ガール』では、バレエダンサーの物語にもかかわらず、上半身の運動を捉えることばかり注力しており身体全体での運動がおざなりになっていた。本作でも、顔のクローズアップが多様されるも、それが視野の狭さを表現できていたかと思うと疑問を抱く。またアイスホッケー部の運動や自転車による運動は、思春期の行き場のない葛藤をぶつける描写として機能しそうなのだが、これも身体の一部しか捉えきれておらず、映像は綺麗で心理的分断描写も印象的ではあったが、乗れない作品となってしまった。

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※映画.comより画像引用