【ネタバレ酷評】『シン・仮面ライダー』戦隊モノ映画だと思ったらRTA動画でしたチクショー

シン・仮面ライダー(2023)

監督:庵野秀明
出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、塚本晋也、手塚とおる、松尾スズキ、森山未來、西野七瀬etc

評価:20点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

Twitterで賛否が極端に分かれている『シン・仮面ライダー』。仮面ライダーは数本、映画を観たことがあるぐらいのほぼミリしら勢の私。一瞬、やめようかなと思ったのですが、怖いもの観たさで映画館へ行ってきた。監督した庵野秀明はここ最近『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』『シン・ウルトラマン』とハイペースで作品を公開しているが、もう少し時間を置いて熟成させたほうがよかったのではと思うほどにネタ不足を感じさせる作品であった。今回はネタバレ酷評となっているのでご注意ください。

『シン・仮面ライダー』あらすじ

1971年放送開始の特撮テレビドラマ「仮面ライダー」を、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ゴジラ」の庵野秀明が監督・脚本を手がけて新たに映画化。

主人公・本郷猛/仮面ライダー役に「宮本から君へ」の池松壮亮、ヒロイン・緑川ルリ子役に「賭ケグルイ」シリーズの浜辺美波、一文字隼人/仮面ライダー第2号役に「ハケンアニメ!」の柄本佑を迎え、新たなオリジナル作品として描き出す。

ルリ子の兄・緑川イチローを森山未來、父・緑川弘博士を塚本晋也、秘密結社SHOCKERの上級構成員・ハチオーグを西野七瀬、同じくSHOCKER上級構成員のコウモリオーグを手塚とおるがそれぞれ演じる。テレビアニメ「ヨルムンガンド」「天元突破グレンラガン」などで知られる作曲家・岩崎琢が音楽を担当。

映画.comより引用

戦隊モノ映画だと思ったらRTA動画でしたチクショー


私は、ゲームを早くクリアするRTA動画が好きだ。しかし、映画館でそれを魅せられるとガッカリする。RTA動画は、ほとんど一発勝負の緊迫感の中で、人間離れしたプレーを魅せ、そこで生じるミスを軽妙に修正していく。その熱量を冷やすために挿入される寒い小ボケがまた味わい深く、そのゲームに対する情熱が私の心を動かす。しかし編集可能な映画でRTA動画を作られると、単に力量不足を誤魔化しているかのように思えてしまう。

まず、本作品のアクションはドリームワークスが『バッドガイズ』や『長ぐつをはいたネコと9つの命』で採用したゲーム的動きを採用している。動きの速いアクションゲームにおいて、ユーザーがヒーローのような攻撃を擬似体験できるように、コマンドを打ち込むタイミングで映像がゆっくりなったり、コマンドを連鎖させていく際に超高速かつ敵に打撃が当たったところを少し静止して魅せる演出が施される。これにより、高速ながら観やすいアクションを実現している。ゲームは映画と違って、ユーザーのアクションに対してプログラムが応答していくインタラクティブなメディアなのでこのような工夫が施されている。その技術が最近、映画に応用されているのである。

仮面ライダーも、高速な攻撃を行いながら、その攻撃を強調するために打撃が当たる瞬間、静止に近い状況を作り出している。しかし、これが非常に観辛いのだ。原因は、割り過ぎているカットにある。そもそもが、人間誰しも達人的な高速アクションができるわけではないので、連続した時間の中に静止を入れることで、誰でも達人になれる動きを実装するための演出だ。なので、連続的なアクションにしなければ、本質的な快感は得られない。にもかかわらず、『シン・仮面ライダー』はカットを割りにまくっているのである。暗い場面でもそれを行うから、全くもって運動の快感を感じないものとなってしまった。


もちろん、戦闘シーンが多い作品なため、少しばかり良いアクションもある。ハチオーグと刀を交えた高速真剣勝負場面では、暗い屋上空間の中、赤い光の残像を魅せる。それも、カット割りが少ない連続したアクションになっていたので、『メタルギア ライジング リベンジェンス』を彷彿とさせる爽快さを抱いた。

戦闘シーンに関しては、柄本佑演じるライバルの仮面ライダー・一文字隼人と工場で戦闘する場面が酷かった。工場といえば、煙が立ち込めており、可燃物質がそこらへんにあり、そしてゴチャゴチャした建築がある。工場にあるものを使ったアクションギミックが楽しめる。しかしながら、ここでの戦闘は空中をピョンピョン飛び回るものとなっている。全く工場のギミックが活かされていないのだ。つまり、草原や海岸でも良いわけで、わざわざ工場に移動して行う必然性がなくなってしまうのだ。

また、物語面がRTA動画っぽい点も問題だ。次から次へと敵オーグが現れる。観客を置いてけぼりにする専門用語の羅列、そして登場人物に感情移入する前に次のドラマが始まってしまう様、何よりもボス戦が驚くべき方法でカットされてしまうところが、RTA的高速クリアするために犠牲となる物語とそれを埋め尽くすテクニック、用語の応酬を感じさせた。例えば、サソリオーグが出てくる場面がある。あれだけ仲間を盾に無双する場面を魅せていた彼女。頭にサソリを乗っけており、面白そうな毒攻撃ギミックが観られそうだと期待していたら、仮面ライダーが戦闘をパスしてしまうのだ。また、ハチオーグとの戦闘も、一度逃げ出してしまうのだ。そしてハチオーグとの再戦シーンでは、味方組織がいつの間にかサソリオーグのエキスで作った銃弾を彼女に撃ち込み抹殺する。

自分の頭の中で、

「ここでサソリオーグとの戦闘をスキップしましょう。ハチオーグとの戦闘もパスします。これにより、30分の時間短縮が可能となります。」

とRTA走者の声が聞こえてきたのであった。

極め付けは、ラスボスだ。あれだけ強かったのに、一定時間耐えるとエネルギー切れで弱体化してしまうのだ。『MOTHER 2』の低レベルやり込み動画で見かける、一定ターン耐えることで敵を倒せてしまう状況と一致していて笑いが込み上げてきたのであった。

庵野秀明監督は、相変わらずエヴァ的な語りと寄りのショット、がらんとした空間に数人を配置する構図にこだわっているが、その引き出しの少なさと悪手としか思えないアクションの連続により、退屈で映画とは呼べない代物でガッカリしたのであった。

※映画.comより画像引用