『Alcarràs』親か子どもに絞った方がよかったかも

Alcarràs(2022)

監督:カルラ・シモン
出演:ベルタ・ピポー、Josep Abad、Albert Bosch、Carles Cabós、Ainet Jounou etc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第72回ベルリン国際映画映画祭コンペティションは地方都市ものが激戦区となっていた。スイスの山奥で、脳腫瘍を患ってしまい仕事ができなくなってしまった男を介護する『A Piece of Sky』や中国農村を舞台にした静かな恋愛ドラマ『小さき麦の花』といった強豪を制し、金熊賞を受賞したのは『悲しみに、こんにちは』カルラ・シモン新作『Alcarràs』だった。実際に観てみると、いまいちピンと来ない作品であった。

『Alcarràs』あらすじ

The life of a family of peach farmers in a small village in Catalonia changes when the owner of their large estate dies and his lifetime heir decides to sell the land, suddenly threatening their livelihood.
訳:カタルーニャの小さな村に住む桃農家の一家の生活は、広大な敷地の所有者が亡くなり、その終生相続人が土地の売却を決定したことで、突然生活が脅かされるようになります。

IMDbより画像

親か子どもに絞った方がよかったかも

家族で営んできた桃農園がソーラーパネル建設によって、立ち退きの危機に晒される。家族はおじいちゃんに、「契約書はどこ?」と問い詰めるが、どうやら口約束で不利な条件を飲まされたらしい。子どもたちの遊び場が撤去され、都市開発の不気味な足音が聞こえてくるが、子どもたちは無邪気に遊ぶ。本作は美しい農園を舞台に、家族の窮地を捉えていくドラマだ。しかし、家族を満遍なく描こうとしているため、事象を並べているだけのように見えてしまう。

例えば、『Tilva Roš』では9割型モラトリアムに生きる若者の目線から描くことで、社会とのつながりがくっきりと浮き彫りになった。本作も明らかに子どもの目線を意識しているのだが、大人の描写が多い、かつそこと子どもとの接点が弱く感じてしまい、結果的に映えな映像が2時間続くだけの映画に思えてしまった。家族の窮地を映え的な映像で捉え、それが映画祭で最高賞を獲る状況は結構グロテスクだなと思うこのところである。

第72回ベルリン国際映画祭関連記事

『A Piece of Sky』孤独な山奥で私たちはただ耐え忍ぶのみ
『小さき麦の花』熟成された親密さに「愛している」なんて発声はいらない
【MUBI】『NEST』秘密基地を作るよ
【アカデミー賞】『Haulout』人はひとり、しかし、そこには、、、※ネタバレ
『Mutzenbacher』官能小説を朗読する
『ケイコ 目を澄ませて』筆記による「声」、拳による「声」で!
『苦い涙』フランソワ・オゾンがリメイクする『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』とは?

※MUBIより画像引用