Mutzenbacher(2022)
監督:ルート・ベッカーマン
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第72回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門を制したのは異色ドキュメンタリーであった。女性監督であるルート・ベッカーマンがロックダウンで映画製作が難航した際に、新たな企画として作ったドキュメンタリーである。16歳以上の様々なバックグラウンドを持つ男性をがらんとした空間に呼び出しオーディションをする。読んでもらうのは『Josefine Mutzenbacher』。本書は50代の花魁が5歳から13歳までの性的搾取について書いた回想録である。映画は朗読する男を通じて何を捉えたのだろうか。
『Mutzenbacher』概要
Ruth Beckermann was born in Vienna. She studied Journalism and History of Art in Vienna, Tel Aviv and New York, after which she obtained her doctorate in Philosophy at the University of Vienna. Along with Josef Aichholzer and Franz Grafl, she co-founded the Filmladen distribution company in 1978. She was involved with the company for seven years, and her first films and books date from that period. Her feature, THE WALDHEIM WALTZ (2018), premiered at the Berlinale Forum, it won several prizes including the Glashütte Original – Documentary Award at the Berlinale and was nominated as Austria’s entry for the Oscars. In 2019, she created JOYFUL JOYCE, an installation for the Salzburg Festival. Her latest documentary MUTZENBACHER (2022) premiered at Berlinale.
訳：ルース・ベッカーマン ウィーン生まれ。ウィーン、テルアビブ、ニューヨークでジャーナリズムと美術史を学んだ後、ウィーン大学で哲学の博士号を取得。1978年、ヨーゼフ・アイヒホルツァー、フランツ・グラフルとともに配給会社「フィルムラーデン」を設立。7年間在籍し、その間に映画や書籍の制作を開始した。彼女の長編作品『THE WALDHEIM WALTZ』（2018）はベルリン国際映画祭フォーラムで初公開され、ベルリン国際映画祭のグラスヒュッテ・オリジナル-ドキュメンタリー賞を含む複数の賞を受賞し、アカデミー賞のオーストリア代表作品としてノミネートされた。2019年には、ザルツブルク映画祭のためのインスタレーション「JOYFUL JOYCE」を制作。最新ドキュメンタリー『MUTZENBACHER』（2022年）はベルリン国際映画祭で初公開された。
※Festival Scope Proより引用
官能小説を朗読する
読書とは、読者が文字を追い、自分の脳内に世界を構築すること行為である。朗読は、脳内に現出した光景を外に出す行為である。それだけに、同じ文章を読んでいても朗読で生み出される情景は異なる。若者は官能描写を表層的に認知し、ニヤニヤを隠そうと恥じらう。ある者はオペラのようによう毒することで、感傷を表現しようとする。ある者は2020年代におけるハードな表現に不快感を示し、あるおっさんは若者と同様のニヤつきを魅せる。
本作は単に、朗読により現出する世界の差を魅せていくものではない。中盤になると、空間に男を大量に並べ、ルート・ベッカーマン監督の指示によって官能描写を朗読させる。集団になると、一気に気持ち悪い笑みが露出する。男性の中の、官能に対する態度。個では抑圧されたゲスな部分が集団になると露出していく。欲望のメカニズムを暴こうとしているように見えるのだ。
正直、原作を知らなければ文脈も知らないこともあり、分かりづらいところも多かった。しかし、ロックダウン下で彼女が考え出した人間のある要素を抽出するこの試みは興味深いものがあった。
※MUBIより画像引用
