『ベイト(餌)』我々も大網に掛かった魚のように……

ベイト(餌)(2019)
BAIT

監督:マーク・ジェンキン
出演:エドワード・ロウ、メアリー・ウッド、バインサイモン・シェパード、ジャイルズ・キングetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本未公開映画界隈で注目されているマーク・ジェンキン。彼の代表作”BAIT”が邦題『ベイト(餌)』で特集グッチーズ・フリースクール × DVD&動画配信でーた
現代未公開映画特集vol.2にて上映が決定した。それに併せて観てみたのだが、ユニークなアプローチの作品であった。

『ベイト(餌)』あらすじ

Martin Ward is a cove fisherman, without a boat. His brother Steven has re-purposed their father’s vessel as a tourist tripper, driving a wedge between the brothers. With their childhood home now a get-away for London money, Martin is displaced to the estate above the picturesque harbour.
訳:マーティン・ウォードは入り江の漁師で、船は持っていない。弟のスティーヴンは、父親の船を観光船として再利用し、兄弟の間にくさびを打ち込んだ。幼い頃に住んでいた家は、今やロンドン・マネーの保養地となり、マーティンは絵のように美しい港の上にある地所に引っ越すことになる。

MUBIより引用

我々も大網に掛かった魚のように……

金のために家を別荘として売り払い、父親の船も観光船として再利用しようとする弟。しかし、船を持っていない漁師の兄にとってそれは致命的であり、兄弟の間に亀裂が入る。田舎VS都市(観光)の対立構造を描いた作品であるが、リゾート地としての美しさを提示することなく、不穏な空気感が全体に立ち込めている。その不穏な空気感を作り上げているのは、独特な編集にある。映像に声を重ねていることを強調するような質感、それを白黒フィルム撮影のタッチで落とし込むことで、かつてあった歴史としての要素を強調していく。つまり、シネマヴェリテ時代のようなドキュメンタリー性で描かれていく訳なのだが、時折、そのシーンと関係ないようなフッテージを挿入していく。例えば、普通に会話している場面かと思いきや、突如、夜とパトカーを前面に押し出したカットが挿入されていく。そして、段々と、漁師としての網漁が大きな音とともに、不気味な足音が近づいてくるかのように強調されていくのである。マーク・ジェンキンの音とカットのアンサンブルによる閉塞感の表現はユニークなものがあり、確かに注目すべき監督といえよう。

※MUBIより画像引用