Steak(2007)
監督:カンタン・デュピュー
出演:Éric Judor、Ramzy Bedia、Jonathan Lambert etc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
カンタン・デュピュー映画を追っていく中で、2作目『Steak』を観た。デビュー作『Nonfilm』は映画における撮る/撮られるの関係から映画を解体しようとする作品であり、このアプローチ自体に新鮮さがないのと映画的面白さがないので記事にはしなかった。『Steak』は『初体験/リッジモント・ハイ』と『他人の顔』を足して2で割ったような変な作品であった。
『Steak』あらすじ
En 2016, la mode et les critères de beauté ont beaucoup changé. Une nouvelle tendance fait des ravages chez les jeunes : le lifting du visage. Georges, un jeune diplômé récemment lifté, profite des vacances d’été pour s’intégrer aux “Chivers”, une bande de caïds liftés à l’extrême. Blaise, un loser rejeté et ex ami d’enfance de Georges, aimerait lui aussi faire parti de la bande…
訳:2016年、ファッションや美の基準は大きく変わりました。今、若者を中心に「フェイスリフト」という新しいトレンドが巻き起こっています。新卒で入社したジョルジュは、夏休みを利用して過激な整形集団「チバーズ」に参加する。ジョルジュの幼なじみで、落ちこぼれのブレイズも仲間に入りたがっている…。
他者になりたい渇望、所属したい渇望
友人の代わりに精神病院に入り早7年。シャバを出たものの頼れるのは幼馴染のジョルジュしかいない。彼は包帯グルグル巻きとなっている。二人は、クリケットと暗算が混ざったゲームをする美容整形集団Chiversに入ろうとする。本作は一見すると、アメリカの悪ガキ青春もの、それこそ『初体験/リッジモント・ハイ』を意識した作品になっている。大人への反抗、将来が決まっていないからこそ、学校という枠組みの中であり余る体力をぶつける。これを謎のゲームや包帯ぐるぐる巻きの人という奇妙な設定でジャンルを誇張しているように見える。
しかし、カンタン・デュピューはそこに人間の本質に迫る眼差しを向ける。それは孤独な者に対する2つの側面だ。一つは「他者」になりたい欲望だ。精神病院上がりのブレイズは包帯ぐるぐる巻きのジョルジュを通じて、失われた7年をリセットしようと「ブレイズ」というアイデンティティを捨て始める。「他者」になるだけでは孤独は癒えない。孤独を解消するには2つ目の要素「群れ」が必要となってくる。Chiversは一見すると荒唐無稽な組織に見える。しかし、組織に所属することで孤独が融解していく。
つまり、本作においてジョルジュは『ファイト・クラブ』におけるタイラーの役割を担っており、孤独な者を内なる異界に誘う存在として機能している。カンタン・デュピュー監督は平然とこのような芸当をやってのけるため面白い監督だと思う。
カンタン・デュピューベスト
1.ディアスキン
2.ラバー
3.Flat beat(Mr.Oizo名義のMV)
4.勤務につけ!
5.地下室のヘンな穴
6.マンディブル
7.リアリティ
8.Steak
9.Wrong
10.Wrong Cop
『Smoking Causes Coughing』が早く観たいな。
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