【ブンブンシネマランキング2021】新作旧作部門
さて、今年も恒例のこの企画がやってまいりました。
「ブンブンシネマランキング」!
今年はサンクスシアターで日本のインディーズ映画をたくさん観たり、踊らないインド映画、ザカリアス・クヌク、ウィリアム・キャッスル、ブリュノ・デュモン映画に触れられた年でありました。また終盤は「死ぬまでに観たい映画1001本」全作品観賞目指して追い上げを行いました。どうしても、フィルム・ノワールや昔の甘ったるい恋愛映画は苦手で、苦痛を強いられる場面もあったが、残り約100本まで来ました。今年の年末は映画ライター業で6本ぐらい寄稿しなきゃいけない関係で、ブログの方は短評多くなってしまいました。旧作のベストも今年は軽めに紹介していきます。リンクをクリックすると詳細な評に飛べますので2022年の観賞の参考にしてみてください。
※タイトルクリックすると詳細作品評に飛べます。
もくじ
20.少年、機関車に乗る(BRATAN/Братан)
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
出演:チムール・トゥルスーノフ、フィルズ・ザブザリエフ、N・タバロワ、R・クルバノフ、N・ベグムロドフetc
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』、『海を待ちながら』のバフティヤル・フドイナザーロフ。一貫して移動をテーマにしている彼の原点といえる本作は、素朴な兄弟の冒険の中に映画史初期の運動に対する好奇心がギュッと濃縮されている。雄大な自然を走る、年季の入った機関車。それを興味深げに見つめ、時に攻撃し始めるアクションの面白さに魅了された。
・【中央アジア今昔映画祭】『少年、機関車に乗る』土食べ食べ少年はどこまでも
19.47歳 人生のステータス(Brad’s Status)
監督:マイク・ホワイト出演:ベン・スティラー、オースティン・アブラムス、ジェナ・フィッシャー、マイケル・シーン、ジェマイン・クレメント、ルーク・ウィルソンetc
いわゆるミッドライフクライシス(中年の危機)を扱った映画。ベン・スティラー演じる青き隣の芝生を見て指を咥えている者が、息子の大学見学で威厳を示そうと空回りしていくところが辛辣でいたたまれなくなる。これは配役の勝利でもあり、ベン・スティラーの魅せる陰りが禍々しさを助長させています。日本ひっそり配信されていた隠れた名作です。
18.TWO/ONE
監督:Juan Cabral出演:Boyd Holbrook, Yang Song, Zhu Zhu etc
今年はMUBI映画をたくさん観たのだが、その中でも最も変な映画がこれだ。中国とカナダの人の生活が交互に映し出されるのだが、段々と二人は一つの存在であり、片方が瞼を閉じると、もう片方が起きる仕組みであることが分かる。では二人が同じ空間にいたらどうなるのか?映画ならではのアイデアに驚かされた。監督であるJuan Cabralはアルゼンチン出身の広告マン。長久允もそうだが、広告マンが映画作るとぶっ飛んだアイデアの作品が爆誕するものですね。
・【MUBIネタバレ】『TWO/ONE』排他制御がかかった男たち
17.パサジェルカ(Pasażerka)
監督:監督:アンジェイ・ムンク出演:アレクサンドラ・シュロンスカ、アンナ・チェピェレフスカ、ヤン・クレチマルetc
今年は「死ぬまでに観たい映画1001本」攻略に力を注いだのですが、『パサジェルカ』が面白かった。アンジェイ・ムンク監督急死により頓挫しそうになった作品。しかし、あまりに美しい画が撮れてしまった為かスタッフが残った素材を使って繋ぎ合わせた未完作品なのだが、それが逆に面白い余白を生み出している。写真で説明される、女の邂逅。そこから抑圧された収容所でのドライな愛に打ちのめされた。
・【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『パサジェルカ』前代未聞の未完映画
16.SHANKS
監督:ウィリアム・キャッスル出演:マルセル・マルソー、ツィラ・シェルトン、フィリップ・クレイ、ヘレナ・カリアニオテス、ラリー・ビショップ、ドン・カルファ、リード・モーガン、ウィリアム・キャッスルetc
今年は夏頃にNetflixでウィリアム・キャッスルの『ティングラー/背すじに潜む恐怖』が配信されたことがシネフィル界隈で話題となった。ウィリアム・キャッスルといえばギミックホラーの帝王として日本では紹介されているが、晩年には『インセプション』を彷彿とさせる『危機一髪!西半球最後の日』を撮ってたりする。そんな彼の遺作『SHANKS』はパントマイムアーティストであるマルセル・マルソー主演作で、サイレント映画さながら身体表象の魅力でもって勧善懲悪を行っていた。人間ラジコンを行う場面が大好きである。
・【特集ウィリアム・キャッスル】『SHANKS』人間ラジコン
15.レディ・イン・ザ・ウォーター(LADY IN THE WATER)
監督:M・ナイト・シャマラン出演:ポール・ジアマッティ、ブライス・ダラス・ハワード、フレディ・ロドリゲス、ジェフリー・ライト、ボブ・バラバン、サリタ・チョウドリー、ビル・アーウィン、M・ナイト・シャマラン、ジャレッド・ハリス、シンディ・チャンetc
ハリウッド映画界では多様性を巡ってよく論争が勃発する。最近、ようやくアジアにも目を向け始めているが、低解像度なアジア像が批判されることもある。ハリウッド映画の試行錯誤による多様性のぎこちなさを考えるとM・ナイト・シャマランほど自然に映画の中で多様性を描いている監督はいないだろう。この歪な怪作『レディ・イン・ザ・ウォーター』は公開当時、批評家に袋叩きにあった作品ではあるが、吃音、アジア人、不良、老若男女が同じ空間で生活を行い、アジア人女性がインテリであることや吃音の男性が主人公であることを特別しせず対等に描く。そしてその特徴をよそに、人々が純粋に協力して住宅地に潜む何かと対峙していく過程に胸が熱くなった。恐らく2006年時点では早すぎた映画なのだろう。ちなみに、この映画の歪さがブラッシュアップされると『オールド』になります。
・『レディ・イン・ザ・ウォーター』シャマランが考える多様性とは?
14. C・C・ライダー(C.C. AND COMPANY)
監督:セイモア・ロビー出演:ジョー・ネイマス、アン=マーグレット、テダ・ブラッキ、ジェニファー・ビリングスリー、ウィリアム・スミス、ドン・シャスティンetc
中野のバー・バカフェに行った際に「チェ・ブンブン、知ってる?」と訊かれた謎のバイク映画。しかし、これが痛快で、冒頭の豪快な万引きシーンに始まり、転倒したバイクをかついでゴールを目指す熱いレースシーンなど見所満載であった。また、広大な大地の中でハーレーをいかに魅力的に配置するかにこだわっており、B級映画侮るなかれと思いました。Amazon Prime Videoにあるので是非。
13.ヒッチ・ハイカー(THE HITCH-HIKER)
監督:アイダ・ルピノ出演:エドモンド・オブライエン、フランク・ラヴジョイ、ウィリアム・タルマンetc
大きな男2人がヒッチハイカー1人によって死の危機に晒される恐怖。常に、背後を取られ身動きができぬまま、旅を続けなければならない厳しさが凝縮された一本。夜になっても、じっと二人を見つめ続けるヒッチハイカーが怖すぎる。
12.フランケンフッカー(FRANKENHOOKER)
監督:フランク・ヘネンロッター出演:ジェームズ・ロリンズ、パティ・マレン、シャーリー・ストーラーetc
今で脳みその実験をしていても、家族が何食わぬ顔で接する多様性のあり方に感銘を受ける。そして何よりも、娼婦たちが連鎖爆発するシーンの強烈なインパクトがたまらない。ポンコツ人造人間のドタバタコントの傑作である。
・【ネタバレ】『フランケンフッカー』蘇生したと思ったら娼婦でしたチクショー
11.氷海の伝説(Atanarjuat: The Fast Runner/ᐊᑕᓈᕐᔪᐊᑦ)
監督:ザカリアス・クヌク出演:ナタール・ウンガラーック、シルヴィア・イヴァル、ピーター・ヘンリー・アグナティアック、ルーシー・トゥルガグユクetc
今年はイヌイット映画の巨匠ザカリアス・クヌク特集をした。カナダ政府によって管理されるイヌイット圏。カナダのアイデンティティに染まっていく中で、イヌイット文化を後世に残すため撮影された映画群は『極北のナヌーク』をはじめとする強者の好奇心によって切り取られ搾取されることからの脱出を試みている。そこにアフリカ各国の映画史との共通点を見出した。さて『氷海の伝説』は、ギリシャ神話のような壮大な物語であり、血縁をめぐるドロドロな関係が独特なタッチで描かれている。中でも、裸の男が氷の大地を走りながら逃げる場面は圧巻であった。
・【特集ザカリアス・クヌク】『氷海の伝説/ᐊᑕᓈᕐᔪᐊᑦ』急襲受けたら裸で走れ、地の果てまで