『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』ジョージア、瞳をとじて きみを描くよ

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう※映画祭題:見上げた空に何が見える?(2021)
原題:რას ვხედავთ როდესაც ცას ვუყურებთ?
英題:What Do We See When We Look at the Sky?

監督:Aleksandre Koberidze
出演:Irina Chelidze,Giorgi Bochorishvili,Ani Karseladze,Giorgi Ambroladze,Vakhtang Panchulidze etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第71回ベルリン国際映画祭で話題となったジョージア映画『見上げた空に何が見える?(What Do We See When We Look at the Sky?)』が第22回東京フィルメックスコンペティション部門に選出されました。Aleksandre Koberidzeは2017年に3時間半近くある恋愛映画『Let the Summer Never Come Again』を発表している新気鋭のジョージアの映画監督です。今回の作品も2時間半かけてジョージアの美しい景色を捉えている作品とのことで観たのですが不思議な映画でした。

※2023/4/7(金)より邦題が『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』に変わり、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーにて公開が決まりました!

『見上げた空に何が見える?』あらすじ

街で偶然出会い、一目で恋に落ちたリザとギオルギ。しかし彼らの外見は、不思議な力によって翌日に完全に別人になってしまう……。ジョージアの俊英アレクサンドレ・コベリゼの遊び心溢れる長編第2作。ベルリン映画祭コンペティション部門で上映された。

※東京フィルメックスより引用

ジョージア、瞳をとじて きみを描くよ

日本ではパンを咥えて「遅刻!遅刻!」と呪文を唱えるとボーイ・ミーツ・ガールの歯車は回り始める。ジョージアの場合本を持って目的地へ急ぐことがトリガーとなる。ボーイ・ミーツ・ガール。本を落とす。本を拾って去る。再びぶつかる。それを長回しで描く。顔は映さない。手元、足元の動きの連動で恋の予感を匂わせる。一目惚れの映画なのに、目線が登場しない。これがこの映画にとって重要な要素となっていく。

これは実際に観て驚いて欲しいのでここでは書かない(他のレビューも読まない方が良い)のですが、ある魔法が映画の中で発生する。観客もその儀式に参加する。するとあら不思議、この男と女の外見が変わってしまうのだ。それと同時に男はサッカーの才能を、女は薬剤師の知識を失ってしまう。彼は流れに身を任せ、身体測定の仕事を始める。彼女はカフェで働き始める。一目惚れした二人は再び一目惚れするのだろうか?神の悪戯によって奇妙なチェスが展開されていく。

濱口竜介の『寝ても覚めても』が、人は外見で恋をするのか内面で恋をするのかといった鶏が先か、卵が先か的ロジックの中で人間心理の曖昧さを映画的に捉えていた。『What Do We See When We Look at the Sky?』の場合、目線の交差を否定することで、内面での恋の強さを信じているように見える。現実的な恋愛を意識するように、あえてジョージアの何気無い日常をつなげていく。そこにはサッカーボールを上から落として子どもたちがはしゃぐといった微笑ましく、魅力的な画がある。

2時間半は長いかなとも思いつつも、映画の魔法で恋をロマンチックに語って魅せるAleksandre Koberidzeの豊穣な手腕に感銘を受けた。『Beginning』のDea Kulumbegashviliもそうだが、ジョージア映画界隈熱いなと感じました。

※MUBIより画像引用