【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『地獄の英雄』事故現場に遊園地が爆誕する狂気

地獄の英雄(1951)
原題:Ace in the Hole/Big Carnival

監督:ビリー・ワイルダー
出演:カーク・ダグラス、リチャード・ベネディクト、ジャン・スターリングetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載作品『地獄の英雄』を観ました。邦題を見る限り、クエンティン・タランティーノや町山智浩が好きそうな戦争映画のイメージが強いのですが、これはビリー・ワイルダー監督のジャーナリスト映画である。ビリー・ワイルダーといえば『サンセット大通り』、『アパートの鍵貸します』という映画史に残る看板を背負っており、そのバックには『深夜の告白』、『失われた週末』、『第十七捕虜収容所』、『七年目の浮気』などが控えているので、『地獄の英雄』が注目されることは少ない。実際、私も「死ぬまでに観たい映画1001本」マラソンをしていなければ発掘に更なる時間を要したことでしょう。ただ、本作は『失われた週末』の鋭い社会批評が込められた怪作でありました。

『地獄の英雄』あらすじ


ビリー・ワイルダーが長年の脚本パートナーであったチャールズ・ブラケットと離れ、新たな脚本家を迎えた作品。ニューヨークの新聞社から閉め出されたジャックは、洞窟内で生き埋めになっている男を目撃する。是が非でも一流紙に戻りたい彼は、スクープを利用し情報操作に手を染める。おのれの野心のためなら手段を選ばない新聞記者が、世論に裁かれる姿は見応え十分。世間の評価が芳しくなかったため、スタジオ側が「Ace in the Hall」から「The Big Carnival」にタイトルを変更したという逸話も。
映画.comより引用

事故現場に遊園地が爆誕する狂気

田舎の小さな新聞社に男(カーク・ダグラス)がズカズカとやってくる。「TELL THE TRUTH」という刺繍を見ながら、彼は「普通なら週給250ドルで受けるが、特別に50ドルで請け負うよ。俺は都心の有名新聞社を渡り歩った男。なんでも知ってるぜ。」と捲し立てるように語る。そして、「TELL THE TRUTH」の看板に従い、訴訟を起こされたり人間関係で揉めた、こんな田舎の新聞社で出世して返り咲くのだと豪快に語る。転職の面接としては最低最悪な自己プレゼンをするのだが、妙なことに編集長は彼を雇う。

それから1年が経つ。男はまだそこにいた。都会経験を肴に同僚をマウントしていくのだが、もうネタ切れらしく呆れられている。そんな彼に珍しく出張が入る。意気揚々と駆け出す彼は、道中洞窟に警察が向かっていくのを嗅ぎつけてついていく。どうやら中で人が生き埋めになっているらしい。先住民は悪霊を怖がって、救助の人手になってはくれない。これはスクープだぞと男は中に入り、出られなくなっている男をパシャりとカメラに収めるのだ。そして助けるフリして、大スクープを立ち上げる。洞窟で閉じ込められている男の妻や保安官を利用して、スクープは大成功!他の報道関係者を拒絶し、完全ネタを独占した彼だったのだが、報道が反響を呼びまくり、野次馬の集落ができ、どういうことか遊園地までできてしまう。

一人の男が出世を目論見、過剰報道したことにより乗せられる世間。マスコミも世間も男の安否を心配しているようで自分の欲望を満たすことしか興味ない姿をコミカルに風刺した作品は、「事故現場にいきなり遊園地が爆誕するなんてありえないだろう」と思ってしまいそうだが、マイクに向かって群衆が自分語りをしまくり、家族が動物園に行く感覚で洞窟を覗きに来るといった過剰さの一貫性がビリー・ワイルダーの力強さを感じさせる。

50年代の映画であるが、21世紀になっても変わらない。ネット炎上が、段々と当事者そっちのけでマスコミと世間が好き勝手に語り、祭りが終われば足早に撤収するのはこの映画の顛末と寸分違わない。

確かに『失われた週末』と比べれば、ヴィジュアルの強みは少なく物語的面白さだけで保っているような作品ですが、今観ても面白い。寧ろ、今こそ再評価されるべき作品と言えよう。

ところで、クライマックスのカーク・ダグラスの演説シーンは三島由紀夫の自決パフォーマンスに影響与えた気がするのは私だけだろうか?

※solzyatthemovieより画像引用

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