【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『ロジャー&ミー』ライン工タコ・ベルでアルバイト

ロジャー&ミー(1989)
ROGER & ME

監督:マイケル・ムーア

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のマイケル・ムーアドキュメンタリー『ロジャー&ミー』を観た。マイケル・ムーアの故郷フリントでゼネラル・モーターズが工場を閉鎖することが決まり、そこに残された人の苦悩を捉えたドキュメンタリーだ。マイケル・ムーアのドキュメンタリーは時事的なものが多いので数十年前の話を今観てもピンとこないのではと不安を抱いていたのでしたが、杞憂であった。

『ロジャー&ミー』あらすじ

マイケル・ムーアの生まれ故郷、ミシガン州フリント。ゼネラル・モーターズ(GM)の工場町として栄えたこの町は、危機にさらされていた。会長ロジャー・スミスの合理化政策により、工場が閉鎖され、人口15万人のうち実に3万人が失業してしまったのだ。ムーアはこの現状を会長に見てもらおうと、単身この巨大企業に立ち向かった。

※Amazon Prime Videoより引用

ライン工タコ・ベルでアルバイト

人間は、人間を数字としてみた時にどこまでも酷いことをする。ゼネラル・モーターズはミシガン州フリントの工場を突如閉鎖することを決める。儲かっているはずなのに不況だと言い訳を作り、アメリカの工場を閉鎖して人件費の安いメキシコへ工場を作ろうとしていたのだ。

15万人いる町の20%にあたる3万人が露頭に迷うことになる。ただでさえ、ゼネラル・モーターズはレイオフを頻繁に行っており、ライン工の中には精神を病んだ人がいるのにさあ大変だ。

サンフランシスコに行くも、馴染めずに故郷に戻ってきたマイケル・ムーアは持ち前のフットワークを活かして、ミクロな世界からマクロなシステムの不具合を軽妙にぶった切る。軽快な音楽、NHKの旅番組のようなゆるさとは反して語られる内容の凄惨さに開いた口が塞がらない。

例えば、失業したライン工たちはタコ・ベルで働き始める。しかし、工場以上に秒単位で動かなければならず、行動を監視されている労働に悲鳴をあげる。また、ゼネラル・モーターズでの成果物が町の中心産業だったこの町が廃れるのを危惧して、市長はテーマパークを作って町おこしをしようとするがたった半年で閉館してしまう。ホテルが廃業し、町からもドンドン人が流出し廃墟が広がっていくのだ。これを見ると、単一産業に頼りすぎることは都市地盤が弱くなってしまうことなんだなと分かる。日本でも、機械産業が凋落する中で2010年代後半にインバウンド戦略、つまり観光国として発展しようとしたが、コロナ禍でその希望は絶たれ廃墟に向かって突き進んでいることを考えると、このフリントの凋落は全く他人事でないなと思う。

マイケル・ムーア映画の中では一番観やすく、興味深いドキュメンタリーでありました。

P.S.ウサギが酷い死に方をするので要注意。ウサギ好きは直視できないレベルにきついです。

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※MUBIより画像引用

 

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