あなたが欲しいのはわたしだけ(2021)
VOUS NE DÉSIREZ QUE MOI
監督:クレール・シモン
出演:スワン・アルロー、エマニュエル・ドゥヴォス、Christophe Paou、Philippe Minyana etc
評価:20点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2021年下半期、ようやく日本でもクレール・シモンへの注目が高まってきました。山形国際ドキュメンタリー映画祭で思春期の男女の家族や学校との関係の吐露を捉えた『若き孤独』が配信されると、今度はフランス映画祭でマルグリット・デュラスに関する劇映画『あなたが欲しいのはわたしだけ』が上映されることが決まった。アンスティチュ・フランセで『夢が作られる森』、DVDで『Le Concours』を観てからフランスのフレデリック・ワイズマンなのではと思っていたのですが、実は彼女は劇映画とドキュメンタリー行き来する監督。予習で観た『Sinon,oui』は子を持ちたがらない男に対して、「妊娠したかも」と主張する女性の話をクローズアップによる心理劇と時折挿入される美しく開放的な画の対比が特徴的な作品であった。
さてマルグリット・デュラス最後の恋人であるヤン・アンドレアとジャーナリストの対話を映画化した本作はどうだろうか?結論を言おう。絶望的につまらなかった。上映後の監督インタビュー動画がメインだと思う程残念な作品であった。
『あなたが欲しいのはわたしだけ』あらすじ
1982年。著名作家で映画監督のマルグリット・デュラスの最後の恋人、ヤン・アンドレアは、友人のジャーナリストに、自分とデュラスの関係、デュラスに対する思いをインタビュー形式で録音して欲しいと頼む。インタビューで明らかにされる、彼らの愛の形とは…。
※フランス映画祭サイトより引用
マルグリット・デュラス ガチ勢の一人語り
マルグリット・デュラスといえば、『インディア・ソング』。登場人物から言葉を剥奪し、画とリンクしないセリフをフレームの外側から送り続けることで小説を読む行為に近い、観賞者が脳内に仮想世界を作り、観賞者としての真実を作りだそうとした映画だ。
ゴダールにしろ、デュラスにしろ世界中にファンが多いが、唯一無二の巨匠に対して映画でラブコールを送るのは危険だ。
本作は、マルグリット・デュラス最後の愛人ヤン・アンドレアとジャーナリストとの対話を映画化したものであるがとにかく退屈だ。確かに、ジャーナリストの語り、テープの音を奇妙に繋げて、ヤン・アンドレアの真実を後世に繋げようとする過程を『インディア・ソング』における画と音の不協和音に寄せて描いている。この演出は面白い。また、ヤン・アンドレアが同性愛者であり、それに対してデュラスが女性形で語りかけているというエピソードには驚かされる。ですが、結局のところ、テレビ番組のインタビューを魅せられているみたいで映画を観ている気になれなかった。
上映後のインタビューで、クレール・シモン監督が熱くデュラスがデュラスがと語っているが、結局ファンの二次創作に過ぎず、彼女の演出に寄せようとしているだけであったし、スティーヴン・フリアーズ『クィーン』に影響受けていると言われてもふーんとしか思えなかった。
私には手に負えない映画なのであとはお任せします。クレール・シモンだったら『Le Concours』を観ましょう。
P.S.彼女が「私は最近の日本映画も好きですよ。」と語り始め、まさかハマグチ…と思ったら案の定『ドライブ・マイ・カー』、『ハッピーアワー』が好きでした。ですよね。
※フランス映画祭サイトより画像引用