【アフリカ映画】第27回ワガドゥグ全アフリカ映画祭ラインナップ発表

第27回ワガドゥグ全アフリカ映画祭FICTIONS LONG METRAGE部門作品紹介

1.Air conditioner(BASTOS Mario,アンゴラ)

日本のMUBIでも配信されたアンゴラのユニークな作品。空からエアコンが落ちてくる怪事件が発生する。警備員がその調査を行いに、アパートを巡る話。寓話を通じて社会を語ろうとする切り口がM・ナイト・シャマランの『レディ・イン・ザ・ウォーター』と重なる部分がある一方で、出オチな気もする。SCREENDAILYの記事によれば当初は短編映画として制作する予定が、撮影していくうちに長編映画に化けた作品とのこと。ひょっとすると、短編映画としてカットしきれなかったのかもしれません。

ブログ記事:【アフリカ映画】『Air Conditioner』アンゴラ、上から来るぞ(エアコンが)気をつけろ!

2.Baamum Nafi(ママドゥ・ジャ,セネガル) 

セネガル初代首相と同姓同名の監督であるママドゥ・ジャはアメリカの名門映画学校ニューヨーク大学・ティッシュ芸術部出身の監督である。長編初監督作にして、既に第72回ロカルノ国際映画祭で2冠(Golden Leopard – Filmmakers of the Present,Best First Feature)を達成している。本作は、子どもの結婚を巡って諍いが起こる内容とのこと。フランスでは批評家の評判が高く、リベラシオンは星5/5、カイエ・デュ・シネマは星4/5をつけている。

3.Bendskins(Moto Taxi)(WANDJI Narcise,カメルーン)

カメルーンではバイクタクシーのことをBendskinsと言う。失業者が生活費を稼ぐためにBendskinsの運転手をするとのこと。あまり情報がないのですが、予告編を観る限り、ネオリアリズモタッチな作品となってそうです。余談だが、カメルーンは427もの言語が存在し、80年代後半の時点ではテレビがほとんど普及していなかった。カメルーンの映画史は不遇の轍となっているのだが、近年だとNetflixで『漁村の片隅で(The Fisherman’s Diary,2020)』が配信されたり、少しずつ頭角を表してきている。

4.Eyimofe(This is My Desire)(ESIRI Chuko,ナイジェリア)

ナイジェリアはアフリカの中で映画産業が発達している国の一つとして知られ、一時期Netflixにナリウッド映画が大量に配信されていた。そんなナイジェリア はテレビをいち早く導入した国でもあり、1959年に西部ナイジェリア 局を創設後、テレビ用の記録映像、教育映像を製作する過程で映画産業も発達していった。なので、予告編を観るとNetflix映画のような高画質となっており、予告編での音楽の使い方も国際映画祭を意識したものとなっている。話は、ナイジェリアのある家庭の貧困がもたらす悲劇ものでカンヌ国際映画祭に出品したらパルムドールが狙えるような内容となっている。実際に、本作は第70回ベルリン国際映画祭に出品されました。余談だが、ナイジェリアの映画館料金が日本円で5,000円という話を聞くが、これひょっとすると貴族向けの映画館がそうなだけであって庶民向けの映画館はもっと安いんじゃないかなと思っている。

5.Farewell Amor(MSANGI Ekwa,タンザニア)

オクラを買いにいかせたら』や『テザ 慟哭の大地』とアフリカ映画界において、しばしば「異国に住むこと」がテーマになる。これは移民として欧米からの差別的な目にさらされたり、言葉や社会システムの問題と対峙することが多いからであろう。17年の時を経て妻、娘が米国入りを果たし家族が一つになったかと思われるアンゴラ移民。しかし、17年の時は長すぎた。文化の違いのすり合わせを行う必要があり、その壁は愛に亀裂を入れてしまう内容であり、アメリカ移民の小さな擦り傷を丁寧に描いているが、個人的に陳腐でもう二捻りぐらい必要だったかなと思う。

それにしても第78回ヴェネチア国際映画祭がNetflix配信作品が多いのに対し、今大会は『Air Conditioner』、『This is not a burial, it is a resurrection』と今回の大会ではMUBIで配信された作品が多い。風の噂だと『Lingui, Les liens sacrés』もMUBIが配給権を買っているらしい。

Filmarks『Farewell Amor』短評:「長すぎた期間」

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