【釜山国際映画祭・ネタバレ考察】『マンタレイ』ベルイマンの『仮面/ペルソナ』から読み解いてみる

【釜山国際映画祭・ネタバレ考察】『マンタレイ』変身が2つを1つにする

※本記事は『マンタレイ』のネタバレ考察記事ですので要注意。

日本では東京フィルメックスで11/15(木)15:20 11/20(火)21:15の二回だけ上映されるタイ映画『マンタレイ』。ブンブンは釜山国際映画祭で一足早く鑑賞しました。Q&Aで監督が、本作はロヒンギャ問題に関して当事者の心の深部まで分かりあうことができないが、映画で伝えることはできると称し、独特な映像で表現したというようなことを言っていたが、正直よく分からなかった。ロヒンギャのことをよく知らないのもあるが、本作は謎だらけだ。ただ、ロヒンギャのことは分からなくともブンブンの中で一つの物語が完成した。それについて語っていきます。

ネタバレなし評:【釜山国際映画祭】『マンタレイ』スターゲイトという名の未知との遭遇

『マンタレイ』あらすじ

タイの沿岸部の沼で、金髪の男は傷ついた男を救う。話すことのできないその男。金髪の男は、自分の過去を彼に吐露し始める。しかし、ある日金髪の男はフッと消えてしまう…

『仮面/ペルソナ』が重要なヒント

Q&AでPhuttiphong Aroonpheng監督は言及していなかったfが、本作は明らかにイングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ』を意識して作られている。全く話せない女とそれを看病する女。後者がしきりに、話せない女に語りかけていくうちに、それが独白となり、段々二つが一つになっていく過程を描いた心理ドラマだ。本作も同様に、ヤクザのような男が、全く話せない傷ついた男を救う。そしてヤクザな男が、しきりに話せない男に自分の身の上話をしていく。そして中盤から、そのヤクザな男が映画から姿を消し、話せない男があたりを彷徨う。そして、ヤクザな男になりきろうと髪を金色に染め始めるのだ。そして段々と二人は一人になっていく。全く『仮面/ペルソナ』と一緒なのだ。

ただ、『マンタレイ』はその骨格の横で全く理解不能なシーンが、強烈に暴れまわっているため、鑑賞後、何を魅せられたのかが分からないのだ。まるで、大海原を自由奔放に彷徨うマンタのように、美しさただそれだけを観客は見守るしかない映画になっている。

ただ、よくよく観察するとヒントが見えてくる。例えば、冒頭。ヤクザな男は人を殺して沼に埋めているような場面が映し出される。しかし、次のシーンでは、沼から傷ついた男を救い出し介抱しているのだ。また、物語の端々にはカラフルな電飾を纏った軍人が銃を構えている。そして部屋をカラフルミラーボールの色彩で包み始める。遂には、進化と言わんばかりに地中から、色鮮やかな何かが生まれる様子が描かれる。

これは、ヤクザな男が持つ暴力と暴力に対する躊躇いの葛藤を映像化したものではないだろうか。男は、人を殺した。しかし、本当は殺人なんかしたくない。やむ得ず殺してしまった自分が嫌だ。だから、傷ついた者を助ける。そして、介抱により、自分が抱える傷が癒えていく様子がカタルシスを生み出し美となる。やがて、その美が暴力と結びつき新しい自分が生まれ救われる。そう、これは《贖罪》をいかに可視化できるかに挑んだ作品と捉えることができるのだ。

過去のトラウマや痛みが癒える瞬間、人は快楽を感じる。それは、本作でいうあまりに美しく不気味なカラフルイルミネーションに集約されているのだ。とはいえ、正直本当にそんな映画なのか自分でも疑わしい。この映画に語る資格がないのではとさえ思えてくる。それでもブンブンはこの映画が好きだ。そして心の深部にまで刺さった作品である。果たしてフィルメックスではどんな反応が返ってくるのか、非常に楽しみである。

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