【釜山国際映画祭】『マンタレイ』スターゲイトという名の未知との遭遇

マンタレイ(2018)
MANTA RAY

監督:Phuttiphong Aroonpheng
出演:Aphisit Hama, Wanlop Rungkumjad, Rasmee Wayrana etc

評価:80点

東京フィルメックスでも上映される今話題のタイ映画『マンタレイ』。Phuttiphong Aroonphengのロヒンギャに捧げられた本作を釜山国際映画祭で観てきた。ロヒンギャにのことを全く知らないブンブンにとって、まさしく未知との遭遇であった。いやそれを通り越して木星の彼方でスターゲイトに突入したボーマン船長になってしまった…

『マンタレイ』あらすじ

タイの沿岸部の沼で、金髪の男は傷ついた男を救う。話すことのできないその男。金髪の男は、自分の過去を彼に吐露し始める。しかし、ある日金髪の男はフッと消えてしまう…

スターゲイトという名の未知との遭遇

フィルムの音のような、セミの鳴き声のようなジーという音が森に広がる。クローズアップされ過ぎて、なんなのか正体が分からないのだが、やがて、それが、電飾を身にまとった兵士であることに気付く。明らかに敵にバレバレな気がするその奇抜なファッション。しかしながら、意外にも森に溶け込んでいく。非常にビザールで美しく魅力的なシーンだ。

次の場面では、金髪の男が人を沼に埋めようとする場面が映しだされるのだが、また場面が進むと男が沼から人を救い出すシーンが挿入される。そして彼が助けた男は、言葉を話せないことも発覚する。

セリフなしで10分近く、要素が無造作に置かれていく。これは何なんだろうと不思議が頭を駆け巡る中、確信に迫る。男が助けた男に対して、自分の感情を吐露していくのだ。そして、男はだんだん姿が見えなくなり、この話せない男が金髪に染め始め、どんどんトランスフォームしていくのだ。

お察しの通り、イングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ

』の世界観だ(Q&Aでの監督の話によると、この話せない男の配置は、ロヒンギャを完璧に知ることのできない我々、伝聞によってしか知りえない我々を象徴する役割を背負わせているとのこと)。

『仮面/ペルソナ』アレンジ映画は『ファイト・クラブ』や『マルホランド・ドライブ

』、『リズと青い鳥

』、『未来のミライ

』等割りと当たりが多い。本作も例に漏れないのだが、どうも様子がおかしい。

映像が、ライトボールと電飾によるカラフルな色彩に包まれ始め、観る者の魂は異次元に転送され始めるのだ。これは観た人にしか分からない究極の体験だ。言語化不可能なまでに、カラフルな暗号がスターゲイトのように我々を包み込む。そして、ミクロコスモスの淵に置き去りにして映画は終わってしまう。あれは何だったんだろう、あそこの意味は何なんだろうと鑑賞後、嚙み締めるように自問自答する。スルメのように、旨味が滲み出る。

非常に難解で劇場公開しなさそうな作品。しかし、本作は映画館の大スクリーン、大音量で観ないとあまり意味のない作品だ。

もし時間があれば、フィルメックスでこの未知と遭遇してみてはどうでしょうか?きっと忘れられない経験ができますよ。

東京フィルメックスでの上映

東京フィルメックスでは11/15(木)15:20 11/20(火)21:15の二回だけ上映されます。サラリーマンには厳しい時間帯ですが、映画館で観ないと意味がない作品なので、時間があれば是非!

東京フィルメックス公式サイト

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