【炎上】近畿大学トリオよ、クラウドファンディングでフィリピン、スラム街行くならこれを観よ!

1.マニラ・光る爪(MAYNILA: SA MGA KUKO NG LIWANAG,1975)

フィリピンの小説家エドガルド・M・レイエスの同名小説を映画化したもので、フィリピン映画史上最も重要な作品。マニラに出稼ぎに行ったっきり帰ってこないカノジョを探しに青年がマニラに来るという話です。マニラに来たものの、無一文な青年は工事現場で肉体労働をし、僅かな日銭でもってカノジョ捜索を行う。注目して欲しいのは、青年が働く工事現場の様子。契約書には1日4ペソ貰えるということで、工事現場の仕事に携わったのだが、いざ給料日になると、「タイワン」という独自ルールで1日2ペソしか貰えないのだ。「タイワン」とは、経営が厳しくなった場合経営者が発動するルールで、給料受け取りを先延ばしにするか、減給される代わりに今受け取るかを選ぶもの。多くの労働者はその日生きるのも厳しいので、後者を選びドンドン経営者から搾取されていく。日本のブラック企業にも、そういう弱者の弱みに漬け込んだ搾取が行われているが、フィリピンにもある搾取の構造が分かる作品である。

こういう貧しい地区、スラム街って、「学校を作り教育をしっかりすれば救える」と思いがち。しかし、本作を観ると、例え勉強ができても一旦搾取の坩堝に嵌ってしまうと抜け出せないことがわかります。日本では未DVD化ですが、最近クライテリオンからDVDが発売されました。英語字幕で是非!

DVD Fantasiumにて販売中(¥2,660)

2.どん底(Tirador,2008)

マニラがどういうところか追体験したければ、この群像劇がおすすめだ。国政選挙直前のマニラ・スラム街を舞台に、警察による理不尽な暴行、チンピラによる恐喝。議員の賄賂が横行する選挙。地獄のような世界で生きる人々を描いた群像劇となっている。昔、海外旅行サークルに潜入した時、フィリピンに行った人から、「あそこの警察怖い。ちょっとでも疑われると1時間ぐらい尋問してくる。」と言っていたのだが、それはどうやら本当のようです。本作は、イキナリ警察がスラム街を一斉家宅捜索するところから始まる。まるでドキュメンタリーかと思う程、スラム街の入り組んだ闇道を行き交い、逃げ惑う人々と一緒にカメラも右往左往するところから始まる。そして、警察は暴力と汚職に満ち溢れていて、疑いのある者を片っ端から捕まえて、執拗に殴る蹴るを行うところに鳥肌が立つだろう。これを観た日には、CAMPFIREに掲載した写真を撤回したくなること間違いなしだ。これから行く場所は、戦場かもしれないことを教えてくれる作品と言える。

3.メトロ・マニラ 世界で最も危険な街(METRO MANILA,2013)

貧困の構図についてよく分かる作品だ。最近、日本では足りない人材を外国人労働者で補っている。コンビニやファストフード店を行くと、日本人のバイトをあまり見なくなった。日本人は知っているからだ、この手のバイトは時給が安いことに。では、時給が安いのに、日本へ来ても豊かにならないのに何故外国人労働者は日本へ来るのか?そのメカニズムが本作で明らかにされる。

フィリピンの貧しい農村で生きる一家は、貧窮を極め、ついに生きることができなくなってしまう。そこで微かな希望を抱きマニラのスラム街へやって来る様子が描かれている。つまり、貧しい者は、少しでも豊かになろうと生活環境を変えるのだ。たった1%でも0.1%でも豊かになる保証があるのなら移動した方がいいと考えるから移動するのだ。何故、ヨーロッパでオンボロ船に乗って、死亡するリスクを負ってまでアフリカ、中東、トルコからドイツ、イタリアへ経済移民が流れ込むのかも説明がつく作品となっている。

4.BLANKA ブランカとギター弾き(Blanka,2015)

彼らは、フィリピンで映像を撮りたいと語っていた。そこで紹介したい作品がこれだ。写真家の長谷井宏紀が初監督にして2015年のヴェネチア国際映画祭で2冠を受賞した全編フィリピンロケ映画だ。マニラのスラム街で『はだしのゲン』のようにたくましく生きる孤児ブランカが、母親をお金で買うために盲目のギタリストと奮闘する映画だ。「大人は子供を買えるのに、子供は大人を買えないの?」というセリフが強烈的。この手の町に行くと、物乞いや物売りに囲まれるというのは有名な話だが、何故彼ら、彼女らはそうも必死に観光客を取り囲まねばならないのかが分かる作品だ。

5.立ち去った女(Ang babaeng humayo,2017)

フィリピンを無意識に見下してませんか、芸術と無縁な国だと思い込んでいませんか?もし少しでも思っているのであれば、ラヴ・ディアスのことを調べると良い。ラヴ・ディアスは2010年代を代表とするフィリピンの映像作家。映画といえば90~120分長くても3時間という時間概念を壊す作風が有名で、基本的に4時間を超える作品を毎年のように作っています(中には10時間の作品もあるよw)。当然ながらほとんど日本では観ることができないのだが、ついこないだ、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『立ち去った女』のDVD/ブルーレイが発売されました。

実際にフィリピンで起きた事件にトルストイの『コーカサスの虜』を重ね合わせた作品。無実の罪で30年間投獄された女の復讐劇。まるで白黒写真の展覧会に来たかのような圧倒的美しい映像。そして、復讐に燃える女とバロット(フィリピン名物料理)売り、日本語を話すドラッグクイーンなどの挿話が少しづつ一つの結末に向かって収斂して行く様のスマートさに驚くことでしょう。また4時間という体感時間を通じて、フィリピンの空気感を堪能できる作品となっています。

日本では作れないフィリピン人監督のアートにインスピレーションが掻き立てられます。

ラヴ・ディアス監督作記事

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