感想

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【ネタバレ考察】『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』ハリボテのマスクは、アバターを現実に引き摺り出す

イメージフォーラム・フェスティバル2021でルーマニア・ニューウェーブの鬼才ラドゥ・ジューデの新作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』が上映された。本作は第71回ベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を受賞しており、またコロナ禍を扱っていることで話題となった作品だ。当ブログでも『THE DEAD NATION』、『UPPERCASE PRINT』を紹介し、監督のユニークな演出に驚かされてきたわけですが『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』それらを遥かに超える進化を魅せてくれました。尚、ネタバレ考察記事です。

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【MUBI】『DADDY AMIN』エジプトのサザエさんはアメリカのミュージカルに羨望を抱く

今、MUBIではエジプトの巨匠ユーセフ・シャヒーン初期作特集が行われており、日本からでも「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている『カイロ中央駅』をはじめ、『THE BLAZING SUN』、『DARK WATERS』、『THE DEVIL OF THE DESERT』、そして『DADDY AMIN』の5作品が観られる。エジプトは歴史学的に「アフリカ」という括りから外されることが多く、「ブラック・アフリカの映画」では最古のアフリカ映画として1955年のセネガル映画『セーヌ湖畔のアフリカ(Afrique-sur-Seine)』を挙げている。この本ではサハラ砂漠以南のアフリカをアフリカ(=ブラック・アフリカ※現在の言い方だとサブサハラアフリカ)と定義している。だが、エジプトを含むと、もう少し古くから映画は存在する。事実、ユーセフ・シャヒーンは1950年にミュージカル映画『DADDY AMIN』を製作しているのだ。ということで、今回は本作の感想を書いていく。

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【ネタバレ考察】『空白』誤解の空白、赦しの空白

『ヒメアノ〜ル』、『犬猿』、『愛しのアイリーン』と今、脂が乗っている監督のひとり吉田恵輔の新作『空白』をユーロスペースで観てきました。現在公開中の『由宇子の天秤』同様、正義の暴走を重厚に捉えた2020年最重要作品のひとつでありました。例のごとく、思わぬギミックと笑いに満ち溢れた作品のなのでネタバレあり考察とします。

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【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】『ルッツ』マルタ映画、社会システムにはめられて

映画祭シーズンですね。毎週のようにオンライン/リアルで映画祭が開催されるシーズンに突入しました。今週はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にフォーカスを当てていきます。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の選定眼は鋭いものがあり、過去には第89回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『タンナ』をいち早く発掘した実績があります。今回は、非常に珍しいマルタ共和国の映画『ルッツ』が選出されていましたので手始めに観てみました。

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【ブルキナファソ映画】『Wend Kuuni』ガストン・カボーレ(31歳・国立映画センター館長)、僕も映画が作りたい

Twitterのスペース機能を使ってブルキナファソのワガドゥグ全アフリカ映画祭(FESPACO)トークをすることになった。ブルキナファソに最近まで住んでいた方をお招きしてガッツリ3時間ぐらいトークをすることになったので、イドリッサ・ウエドラオゴ以外のブルキナファソ映画を探していたら『Wend Kuuni』を観ることに成功した。

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『MINAMATA-ミナマタ-』表層部をなぞる水俣病、演劇だったらまだよかった?

第70回ベルリン国際映画祭に出品されて話題となったジョニー・デップ主演の水俣病を扱った映画『MINAMATAーミナマター』が日本でも公開された。水俣病といえば、四大公害病の一つとして学校で習ったこともあるでしょう。土本典昭のドキュメンタリーに触れると解像度が少し上がり、長期に渡る闘いによって被害者たちの間にも分断が生まれてしまっていることに気づかされる。さて、そんな複雑な状況を海外からの目線で果たして上手く描けるのだろうか?不安を抱えながら映画館に行きました。

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『水俣一揆-一生を問う人々-』のれんに腕押しなら、のれんを掴め!

9月、10月は個人的に不安しかない作品が2本控えている。1本目はフランスのアルチュール・アラリ監督が小野田寛郎を描いた伝記超大作『ONODA 一万夜を越えて』。もう一本はこれまた海外の監督アンドルー・レヴィタスが水俣病を扱った『MINAMATA―ミナマタ―』である。どちらもセンシティブなテーマであり、日本の監督ですら上手く事象を捉えつつ映画の文法に翻訳できるか難しいところがある。特に『MINAMATA―ミナマタ―』は時代考証の一部を真田広之が行ったと耳にしているだけに余計に心配だ。そんな本作を観る前に予習しようと土本典昭監督作『水俣一揆-一生を問う人々-』を観ました。