感想

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【ネタバレ考察】『ONODA 一万夜を越えて』忠誠という名の信仰

第74回カンヌ国際映画祭ある視点部門で一本の作品が話題となった。それは『ONODA 一万夜を越えて』だ。ある世代の人はこのタイトルを聞いてピンと来るのだとか。あの小野田寛郎のことかと。自分は不勉強ながら、この映画で初めて彼のことを知ったのだが、彼の半生を映画化するのはあまりに危険だということは明白だった。アジア・太平洋戦争後30年近くフィリピン・ルバング島に潜伏し、終戦したことを信じず多数の現地人を殺害しているのだから。一人の人間の力強い生き様を描いただけでは炎上不可避である。また、監督はフランス出身のアルチュール・アラリである。外国人が日本とフィリピンとの関係、強いては日本軍のある種カルト教団的体制を捉えることができるのだろうか?最近だと『MINAMATA-ミナマタ-』の例があるだけに不安しかなかったのですが、杞憂でした。尚、ネタバレ記事です。

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『人数の町』「人数」にされていく人々

今、巷で『イカゲーム』が流行っている。NETFLIX配信のデスゲームもので世界中で大ブームを巻き起こしているのだとか。その流行に伴い、日本映画を貶すツイートが散見される。確かに『イカゲーム』の金のかかったディストピア像、GoogleやAmazonなど現代社会を支配する企業が、色を強調したロゴを使用していることに併せて、単色カラーを強調した作りにしているところにも鋭さを感じる一方で日本のデスゲームものは下品な金を起用し、時代遅れなSFの色彩を伴っていたりして見窄らしく見えるのは無理もない。しかし、日本にも世界に戦えるレベルの画作りをしている作品があった。

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【東京国際映画祭】『スワン・ソング』ウド・キアの頭にシャンデリア

第34回東京国際映画祭で上映されるウド・キア出演作『スワン・ソング』を観ました。本作は実在したヘアドレッサーPat Pitsenbargerの実話に基づいた話である。監督はゲイをテーマにした作品『Edge of Seventeen』の脚本を手掛けたトッド・スティーヴンス。日本では恐らく初めての紹介となる。

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『カード・カウンター』男は運命を数える、再び暴力のカードを引き当てぬように

『タクシードライバー』の脚本家として知られ、今でもコンスタントに監督、脚本作を世に放っているポール・シュレイダー。彼の新作『THE CARD COUNTER』が第78回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品された。予告編を観る限り、ソダーバーグ映画のような作りをしていたのですが、観てみると『魂のゆくえ』から進化したブレッソンショットが楽しめる大傑作でした。

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『DUNE/デューン 砂の惑星』ヴォイスが我々に語りかける

アレハンドロ・ホドロフスキーが頓挫させ、デヴィッド・リンチが失敗させてしまった悪夢の映画化『DUNE』にドゥニ・ヴィルヌーヴが名乗りを挙げた。すっかりSF超大作の人となった彼が『DUNE/デューン 砂の惑星』を映画化。2部作の前編が日本で公開された。Twitterでの評判はお葬式モードでした。確かに、それも納得な作品である一方で、『十戒』、『ベン・ハー』、『天地創造』といった50~60年代の超大作を彷彿とさせる見応え抜群な映画となっていました。

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【YIDFF2021】『理大囲城』籠城戦で壊れていく学生たち

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021大賞を獲った作品は香港民主化デモにおける香港理工大学籠城事件を内部から捉えた『理大囲城』だった。匿名の監督たちによる作品より、本作には監督が実質存在しない。現地では上映できず、日本公開も非常に難しいとのことなので、最終日の臨時上映に駆けこみました。本作に採点をつけるような真似は私にはできない。だが、多くの方に観て欲しいので、FilmarksとTwitterのみ★5をつけることにしました。