『ストロベリー・マンション/Strawberry Mansion』夢にまで広告が紛れ込む世界

ストロベリー・マンション(2021)
Strawberry Mansion

監督:ケンタッカー・オードリー、アルバート・バーニー
出演:ケンタッカー・オードリー、アルバート・バーニー、エフライム・バーニー、リード・バーニー、ケニー・ブロッソワetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

強烈なビジュアルの映画『Strawberry Mansion』を見つけた。場面写真を観ると、ピンク色の空間が可愛らしく魅力的だ。実際に観てみると、見かけ倒しに終わらず興味深いものがありました。

※2023/12/23(土)~30(土)開催のグッチーズ・フリースクール × DVD&動画配信でーた現代未公開映画特集vol.2で上映決定!

『Strawberry Mansion』あらすじ

In a future where the government records dreams and taxes them, a dream auditor gets caught up in the dreams of an aging eccentric.
訳:政府が夢を記録し、課税するようになった未来で、夢監査人が年老いた風変わりな男の夢に巻き込まれることになる。

IMDbより引用

夢にまで広告が紛れ込む世界

ピンク色の空間で男がいる。やがて夢が醒めると、薄暗い部屋となる。男はメモリチップをコンピュータに差し込み夢を再現する。2035年、人々の夢は政府によって管理されている。快適な夢と引き換えに、政府が監視しているのだ。James Preble(ケンタッカー・オードリー)は人々の夢を監視するエージェントだ。彼は任務でArabella Isadora(Penny Fuller)のもとを訪れる。彼女の家には夢のアーカイブが沢山保管されて怪しい。夢の監視が始まる。するととある女性によって中断されてしまう。彼女は何者なのだろうか?彼女についていくうちに、政府が人々の夢に広告を送り込んでいることに気づかされる。

本作は夢版「1984年」、または「華氏451度」といえよう。政府側の人間が社会の裏側を知り、そちら側の世界に行く物語として共通している。しかし本作は2035年の世界を想定した現実的なアイデアと問題点を刻み込んでいる。YouTubeを見れば、5分に一度広告が入る。Twitterを読んでも広告がぬるっと忍び込む。快適な夢を提供できる社会になると、当然広告が入り込むであろう。そして、現実と比べて夢の場合、なかなか違和感に気づけない。自分の意思で動いているようで、物語にコントロールされている。そこに広告が入り込むと簡単に人の行動をハッキングできてしまうのだ。可愛らしい世界観ながらも、映画はこの問題点を辛辣に描いている。『コングレス未来学会議』と並び2020年代に変わっていくであろう生活様式についての批判的眼差しを感じた一本でした。

これは日本公開期待できるであろう。

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