【ナイジェリア映画研究】『マン・オブ・ゴッド: 迷える魂』父の呪縛はいつまでも続く

マン・オブ・ゴッド: 迷える魂(2022)
Man of God

監督:ボランレ・オーステン=ピーターズ
出演:アカ・ナニ、オサス・イゴダロ・アジバデ、アトランタ・ブリジット・ジョンソン、ドルカス・ショラ・ファプソン、ジュード・チュクウカ、アヨ・モガジ、オルミデ・オウォルetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Netflixナイジェリア映画に新作が現れた『マン・オブ・ゴッド: 迷える魂』だ。これが作劇としてかなり面白かったので紹介していく。

『マン・オブ・ゴッド: 迷える魂』あらすじ

宗教を重んじる家族から逃れ、自分の人生を歩んでいく決意をしたサムエル。だがその魂は、新たな世界と、捨てたはずの信仰心の間で揺れ動く。

父の呪縛はいつまでも続く

サムエルは教会の主人の息子だ。父は今日も教会で演説をしている。レイプされ、望まぬ妊娠をしてしまった女性に中絶を許したまえと語っている。そんな神の仕事をする父であったが、息子サムエルには厳しい。強烈な体罰をするのだ。聖職者の顔と暴力亭主の顔の矛盾に憎悪を募らせ、彼は家を去る。もう二度と戻ってこまいと。大学生になった彼は、授業をサボりクラブでバイブスを上げる存在になっていた。授業のことは彼女に任せていた。そんなある日、ヒョこんなことから教会で演説する仕事の手伝いをやる羽目になってしまう。幼少期がフラッシュバックし、嫌気がさしながらも、クラブのようにバイブスを上げまくる。だが、それを好ましく思っていない、上層部がセクハラ容疑をチラつかせて彼をコントロールしようとする。また、以前から無視していた母親からの手紙に進展もあり、事態は思わぬ方向へと転がっていく。

本作は、幼少期の憎悪といかに向き合っていくのかをテーマにした話だ。Netflixで配信されるナイジェリア映画は、結婚至上主義や家族との関係性による呪縛からの解放や葛藤を描く作品が多い。本作の場合、毒親から逃げたものの、教会での演説仕事を通じてサムエルの逃れられない血の問題を浮き彫りにさせている。サムエルもまた、ステージでバイブスを上げる存在であり、感情的で暴力的な側面を持っていることを暗示しているのだ。

また、のっぺりした画が多いイメージのナイジェリア映画としては、大学の校舎を真横から捉えた構図や、ダイナミックに捉えたライブパフォーマンスは映画を観ているような気分になった。Netflixナイジェリア映画の中では入門としてオススメである。

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