幸福の設計(1946)
ANTOINE ET ANTOINETTE
監督:ジャック・ベッケル
出演:ロジェ・ビゴ、クレール・マフェイ、ノエル・ロクヴェール、アネット・ボワークルetc
評価:90点
ずっと前から気になっていた『幸福の設計』を観た。『ル・ミリオン』に近い話ではあるのでが、「宝くじ」の使い方が面白かった。しかし、そこに触れるとネタバレとなってしまうのでネタバレありとした。
『幸福の設計』あらすじ
ジャック・ベッケル監督の「パリ下町3部作」と呼ばれるシリーズの第1弾。パリ下町のアパルトマンで暮らすアントワーヌとその妻アントワネット。貧しいながらも幸せな生活を送っていた彼らだったが、ある日アントワネットが何気なく購入した宝くじが80万フランもの大当たり。ところがアントワーヌが賞金を受け取りに行く途中で宝くじを落としてしまい……。パリの下町に生きる人々の姿を生き生きと描いたヒューマンドラマ。
幸福の不確定装置としての宝くじ
靴から出土した80万フランの当たりくじを拾った男が妻と夢を膨らませるが、換金センターに行くと宝くじがなくなっており、探し回るといった内容。
「宝くじ」はすでに幸福が保障されているが、その幸福は確定していない。不確定な状態としてあるのだ。その特性を活かし、不確定を確定させようと人を動かし、確定するか否かの宙吊り状態に緊迫感が生まれる。そうした装置として「宝くじ」は機能する。
そして、宝くじはとても小さいので管理しないといけない。本や財布といった入れ物を使って慎重に運ぶ。でも目の前にある幸福を噛み締めたいので、本の中に隠していたとしても時折確認し、心を落ち着ける。
実は、本作において重要なのは宝くじよりも「本」の扱いにある。キオスクで、男が宝くじのアタリを確認する。ハズレだと知ると「捨てておいてくれ」と言う。それをおばちゃんが本に挟む。今度はその本をヒロインが持ち帰る。そこへアタリくじが差し込まれるのだ。この本の中には、不幸と幸福が共存しており、主人公は確認しないまま「不幸」を換金しようとし、ユリシーズさながらの壮絶な冒険に駆り出されるのだ。単に、宝くじを輸送する装置として小道具を消費しないところに本作の面白さがあった。
P.S.制作会社は違うのだが、『ル・ミリオン』と全く同じアパルトマンが出てきたのは印象的であった。
※映画.comより画像引用