『Four Daughters』実の娘と虚構の娘

Four Daughters(2023)

監督:カウテール・ベン・ハニア

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第76回カンヌ国際映画祭に『皮膚を売った男』のカウテール・ベン・ハニアの新作が出品された。これがかなりの異色作で、オルファを中心に実の娘2人と失踪した娘を補うようにあてがわれた俳優2人を通じて家族の肖像、そして社会を紐解こうとする内容とのこと。実際に観てみた。

『Four Daughters』あらすじ

A mother and two of her daughters are joined by actors to work through their family history and grasp the other two daughters’ heartbreaking choices.
訳:母親とその娘2人が、俳優たちとともに家族の歴史を振り返り、もう2人の娘の悲痛な選択を理解する。

MUBIより引用

実の娘と虚構の娘

実際の事件を再演することはしばしばドキュメンタリー映画の世界で行われる。有名なものとしては『アクト・オブ・キリング』がある。剥き出しの再演により実際の暴力が強烈に浮かび上がる演出が施されていた。本作も似たようなところがある。失踪した娘を俳優で補う形で演じられる家族の記憶は、実際の経験者による再現、伝聞により加工され再現されるものが入り混じり、虚実が曖昧になってくる不気味さを帯びている。この不気味さを支えているのは、序盤の楽しげな会話風景だろう。偽りの娘がいるにもかかわらず、まるで本物の家族のように触れ合う5人。この幸せそうな風景を軸とし、ひとりまたひとりと幸せを崩していく。語り、再演、演技から舞台裏と移動していくことによって段々と真実が明らかになっていく。本作は、なにも知らない方がよいタイプの作品なため、ここではひとつ良かったショットについて語って終わる。それは、複数の窓を経由して女性を捉えるといったものだ。この映画のメタ構造を象徴した画におけるカメラワークが洗練されており、個人的によかった。

※MUBIより画像引用