『雄獅少年 ライオン少年』中国の3DCGにひたすら驚かされる

雄獅少年 ライオン少年(2021)
原題:雄狮少年
英題:I Am What I Am

監督:ソン・ハイポン
出演:Xin Li、大雄、Hao Guo、Meng Li、Jiasi Li etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、YouTubeチャンネルの有識者(リスナー)から教えていただいた中国のアニメーション『雄獅少年 ライオン少年』が公開されたので観てきた。中国のアニメーションは今、密かに注目されている。ディズニー/ピクサーの質感から、日本のアニメの質感と幅広い技術を吸収して生み出される作品は凄まじいようで、最近では『深海』が話題となった。中国映画に疎い私も、良い加減触れる必要があると感じて観たのだが、これが素晴らしい作品であった。

『雄獅少年 ライオン少年』あらすじ

中国の伝統芸能である獅子舞の演者を夢見る少年たちの姿を描いた長編アニメーション。

2世紀ごろ魏晋南北朝時代の中国大陸が発祥とされる獅子舞。現代中国の獅子舞は、前足を担当する1人と、背中と後ろ足を担当するもう1人が獅子となり、そこに楽団も加わって、旧正月や店舗の開店祝いの場などで「招福駆邪」として演じられる。広東の田舎で暮らす少年チュンは家が貧しく、両親は長年にわたり都会の広州に出稼ぎしていた。ある時、自分と同じ名をもつ獅子舞の演者の女の子と知り合ったことをきっかけに、チュンは獅子舞の世界にあこがれを抱くようになる。かわいい女の子を目当てにチュンに誘われ参加したマオ、そしてマオの知り合いのゴウとともに獅子舞チームを結成したチュンは、若いころは町一番の獅子舞の踊り手だったという干物屋の店主チャンに師事し、獅子舞の演者として成長していく。

日本では2022年に「雄獅少年 少年とそらに舞う獅子」の邦題で字幕版が公開されて好評を博したことから、2023年5月、新たに日本語吹き替え版が制作され全国公開される。

映画.comより引用

中国の3DCGにひたすら驚かされる



最近、Blenderで3DCGの勉強をしている。そんな私は本作を観て衝撃を受けた。墨絵のようなオープニングが終わると、ディズニー/ピクサー映画のような質感の猫が登場し、そのまま自転車を漕ぐ少年が町を案内する。木から葉が揺られるように舞うのだが、その量と本物に限りなく近い質感に衝撃を受けたのだ。作画コストが高すぎると。確かに、リアリティの意味で言えば『ソウルフル・ワールド』の都市部は現実と見間違えるほどの代物だ。しかし、本作はその上をいく。『ソウルフル・ワールド』におけるリアルさは建物のような静止したものにおいて発揮される。一方『雄獅少年 ライオン少年』の場合、頻繁に天気が変化する。雨、曇り、晴れが畳み掛けるように切り替わっていき、その空間を支配するように風に揺られる葉や水が映り込む。これらの描写は、一瞬チラ見せの静止画ではなく運動として数秒に渡り変化を演出してから切り替わるので、作画コストの高さと異様なこだわりを感じるのだ。おまけに、獅子舞はパーツが多く、硬い面と柔らかい面が混在する複雑な造形となっている。それを軽やかに動かしていくので、本作の技術力がいかに恐ろしいかが分かる。

そんな状況下で友情・努力・勝利の物語を展開する。獅子舞バトルに人生を賭ける少年たちの物語なのだが、少年たちの足取りはおぼつかなく、足場から足場への移動はスリリングなものとなっている。この宙吊りのスリルが、実写のカンフー映画に近い興奮を与える。今となっては中国映画業界もコンプライアンスの関係で、危険なスタントがやりにくくなったと聞く。ましてや少年にあんな危ないスタントをさせることはできない。だが、昔は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』やジャッキー・チェンの映画のように、超人的運動を捉えた作品が多数存在し、死ぬかもしれないスリルが映画に高揚感を与えていた。その高揚感の根幹にあるのが宙吊りのスリルであり、刹那の間を挟む緩急溢れるアクションの中にこうしたスリルを挿入することで実現できるものとなっている。

このアニメーションはその肝を押さえているため、カンフー映画としても一級品に仕上がっていた。日本では公開時期もありひっそりとした公開となっているが、必観の作品である。

※映画.comより画像引用