SATURN BOWLING(2022)
監督:パトリシア・マズィ
出演:アリエ・ワルトアルテ、アケーレ・レッジャーニ、Y・ラン・ルーカス、レイラ・ミューズetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
師走ですね、師走といえばカイエ・デュ・シネマベストの発表!
2023年はかなり攻めたラインナップになっていて面白かった。折角なので2022年の未観作品を探して鑑賞した。今回はパトリシア・マズィ『SATURN BOWLING』である。彼女の作品はジャンル映画を踏襲したタイプのものが多く、カイエ・デュ・シネマベストで時折選出されるのだが、正直ピンとこない印象がある。本作はその中でも割と分かりやすい作品であった。
『SATURN BOWLING』あらすじ
Investing a series of murder by a police offer Guillaume, following his sibling’s unusual management of his father’s business.
訳:父親の事業をめぐる兄弟の異常な経営に端を発した、警察内定者ギヨームによる連続殺人事件を追う。
有害な男性性はボウリング場の外側にまで……
男がハンバーガーを食べながら夜道を歩いている。すると、背後からにじり寄るように車が近づき、葬式があることを知らせる。父が死に、ボウリング場が残された。それを受け継ぐのはフーテンの異母弟アルマンだった。ボウリング場に有害な男性性が集まる中、街では殺人事件が勃発する。露悪的な暴力映画を軸とした本作は、強烈なレイプ描写、殺人シーンを畳み掛ける。その陰惨さはラース・フォン・トリアーやギャスパー・ノエを凌駕するものがあり、思わず目を瞑ってしまうものである。
しかしながら、本作はその強烈さを用いて、社会に傾れ込む有害な男性性の恐怖を捉えようとしている。ボウリング場ではニタニタ不敵な笑みを浮かべる男たちが、猛獣狩りをする映像を観ながらボウリングを楽しんでいる。ドス黒い赤や紫に照らされるネオンの中で、暴力的な男性のコミュニティが形成され、女性は少し萎縮している。そして、1対1の関係になった時、レイプが発生し、街へと暴力の形跡が放り出される。
暴力の連鎖を止めようとするも、ネオンの中の傍観者として朱に染められようとする。ひたすら、この世の悪を煮詰めたような世界が広がっており、戦慄しっぱなしの2時間であった。
個人的に、クリシェの応用例でいえばアラン・ギロディが見事までに家侵入ものを応用させた『ノーバディーズ・ヒーロー』に軍配があがった。
※IMDbより画像引用