【アマプラ】『ゴンドラ』孤独な者が出会うと饒舌になる

ゴンドラ(1987)

監督:伊藤智生
出演:上村佳子、界健太、木内みどり、佐々木すみ、江佐藤英夫etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime Videoでずっと気になっていた『ゴンドラ』を観た。これが凄まじい作品であった。

『ゴンドラ』あらすじ

1987年に当時20代の若者たちが中心になり独立プロで製作された作品で、美しい映像と幻想的な色彩でひとりの少女の心の対話を描いた。青森県下北半島から上京し、ゴンドラに乗って高層ビルのガラス拭きをする仕事に就いた青年・良。一方、音楽家の母れい子と高層マンションに2人で暮らす11歳の少女かがりは、仕事で忙しい母のいない部屋で、2羽の白い文鳥と音叉の響きに耳を澄ますことがささやかな遊びになっていた。ある日、学校から帰宅かがりは、文鳥の1羽が傷ついているのを見つける。マンションの窓ガラスを掃除していた良は、窓の外からその様子を知り、文鳥を動物病院に連れて行くかがりに付き添う。しかし、文鳥は死んでしまい、母親に死骸を捨てられたかがりは家を飛び出す。そんな彼女と偶然再会した良は、かがりを故郷の下北半島に連れて行くことにするが……。87年10月に渋谷のホールで先行封切りというかたちで上映して反響を呼び、88年にテアトル新宿で劇場公開されて話題を集めた。2017年、オリジナル35mmフィルムおよびデジタルリマスター版で30年ぶりにリバイバル上映。メガホンをとった伊藤智生は、劇映画(一般映画)の監督作はこれ1作のみで、本作以降はアダルトビデオ界でTOHJIRO名義で活躍。

映画.comより引用

孤独な者が出会うと饒舌になる

ビルで窓清掃している男。茹だるような暑さ。ビルの窓から見える会社の風景とは無縁だ。社会と分断されてしまったかのような空間の中彼は彷徨っている。少女がいた。彼女はプールで目眩を起こす。目に水が入ったような歪んだ視界、彼女もまた社会と隔絶されているようだ。実際に、親からは適当に扱われており居場所を失っている。高層ビルに住む彼女は地上に降り立ち、ビル清掃をする男も地上へ降り立った。ボーイ・ミーツ・ガール。寡黙な二人は饒舌となり、男は彼女を故郷へ連れて行こうとする。

『仮面/ペルソナ』を彷彿とさせる孤独な者の内なる対話を2人交えて行うタイプの作品である。理詰めで紡がれる本作は孤独を抱える者に癒しを与えるものとなっている。序盤は、セリフを抑え、ブラインドや窓といったオブジェクトで心の境界線を引く。そして割れた皿に虫、仄暗い画といったネガティブな空気感漂わせる画で紡いでいく。だが、男が過去に立ち返ると、それは美しいものとなる。小さな木彫りの船がやがて大きな船を作る運動へと豹変していく場面では、男が孤独や過去を克服し人生を前進させようとするメタファーとなっている。

シンプルながらも、一つ一つの描写に説得力を帯びた凄まじい作品となっていた。

※映画.comより画像引用

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