『フィフィ・マルタンガル』ジャック・ロジエ、グダグダ茶番劇のスペシャリスト

フィフィ・マルタンガル(2001)
Fifi Martingale

監督:ジャック・ロジエ
出演:ジャン・ルフェーブル、リディア・フェルド、マイク・マーシャル、ジャック・プティジャン、イヴ・アフォンソetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

レトロスペクティブ上映が熱い2023年にジャック・ロジエがやってきた!ジャック・ロジエ自体は数年に一度のペースでレトロスペクティブが組まれており珍しくはないのだが、今回はフランスルートでも入手が困難な『フィフィ・マルタンガル』が上映される熱いラインナップとなっている。早速ユーロスペースで観てきたのだが、相変わらず豊穣なグダグダ茶番劇であった。

『フィフィ・マルタンガル』あらすじ

「アデュー・フィリピーヌ」「オルエットの方へ」などで知られるヌーベルバーグの映画作家ジャック・ロジエの長編監督第5作。

パリで大ヒット中の戯曲「イースターエッグ」。いわゆるプールバーグ劇と呼ばれる大衆的な娯楽演劇作品だが、そんな自作が権威あるモリエール賞を受賞したということを知った劇作家は、きっと何かの陰謀に違いないと思い込み、上演中の戯曲を改変し、陰謀を企んだ“敵”に報復しようとするが……。

日本では劇場未公開の作品だったが、2023年7月開催の特集上映「みんなのジャック・ロジエ」にてデジタルレストア版で劇場初公開。

映画.comより引用

ジャック・ロジエ、グダグダ茶番劇のスペシャリスト

いきなり、うぁ!前から車が!と事故が勃発。事故の原因となったおじさんは、書類を出そうとするように見せかけて逃走を図る。カーチェイスになるわけでもなく、とてつもなく遅いやり取りにジャック・ロジエらしさを感じる。彼の映画はいつだって大惨事が起きているのに、ゆったりしたスピードで進むのだ。どうやら演劇の練習が始まるのだが、これが頭を抱えるほどの茶番で、ピザがどうこうと延々と語る。そして全くもって完成形が見えないまま、登場人物はカジノへと繰り出してしまう。演劇はひたすら失敗の気配がするのに、カジノでは小手先の目押し術で儲けが発生しており、そのギャップにじわる。だが、そんなグダグダにも終わりが近づいてくる。本番だ。終始、茶番な練習が続いていたため、イルミネーションアニメ『SING』以上の修羅場を迎える。役者は全然セリフを覚えていないし、アクシデントが右から左からやってくる。だが、そんなアクシデントこそが人生の醍醐味だと客席からドッカンドッカン笑いが起きてくるのだ。

なんでも効率化の時代になった今、この豊かな停滞とそれを受容していく観客のリアクションを観ると心が温まる。ジャック・ロジエは素晴らしいグダグダ茶番劇監督だと改めて思ったのであった。

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※IMDbより画像引用