『涎と永遠についての概論』映像制作のアイデア集

涎と永遠についての概論(1951)
Traité de bave et d’éternité

監督:イジドール・イズー
出演:イジドール・イズー、ジャン=ルイ・バロー、ブランシェット・ブリュノワetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近、ゲーミングPCを買ったので本格的に映像制作に挑戦している。また新しい会社が広告系の会社なのでメディアの勉強をしたいなと思っている。その中で以前から気になっていた『涎と永遠についての概論』を観た。軽くフッテージを観たことがあるのだが、画に落書きをしていくスタイルが非常にカッコ良く、インスピレーションの糧になると感じたからだ。『サドのための絶叫』を自分の中で重要な作品に位置付けている身としてこの映像体験は貴重なものであった。

『涎と永遠についての概論』あらすじ

ルーマニア出身の詩人イジドール・イズー(1925-2007)によって創始された、戦後フランスでもっとも過激な前衛芸術運動レトリスム(文字主義)。映画史上初めてノイズやスクラッチを多用したその伝説的な映画第一作となる本作は、上映当時スキャンダルとなり、カンヌでジャン・コクトーに絶賛され、後の映像アートに大きな影響を与えた。

アップリンクより引用

映像制作のアイデア集

呪文のような声が響く中、テロップが表示される。そして本を取る横に年代が挿入される。何気ない日常の風景を繋いでいき、やがて上下が反転する。船向かって降りていく、上がっていくものは映像のマジックによりその物理法則が変換されていく。人物はノイズによってより匿名性を増していく。画と音は分離していく。本作では映像メディアが持つ、実際の物理世界と異なる側面を次々と提示していく。今となっては、物理世界/仮想世界の境界線が強くなっている。だが1951年段階、映画が最先端のメディアだった時代にとって、イジドール・イズーは実際の物理世界を捉えたものだが、それは容易に修正可能で、様々な文脈や素材に分解、組み立てができるもの仮想世界的なものとして映画を見つめたのではないだろうか。ここで提示される、音や映像の分離、映像に手を加えることによって物理法則や文脈を変えられるかもしれないという愛では、PCで動画が編集できるようになった時代にとってアイデアの宝庫と言える。




実際に、自分も少ない旅行素材のノイズを誤魔化すために実際の映像で流れている音声に、別の映像の音声を流し込んだり、史実とは関係ない素材をつなぎ合わせながら伝記を紡ぐことをしている。やはり、映像制作する上で実験映画を追うことで、自分の編集に理論がついてくるなと感じたのであった。理屈抜きにしてもカッコいい作品なのでオススメしたい。

※MUBIより画像引用