【アカデミー賞】『The Flying Sailor』走馬灯/肉体/精神

The Flying Sailor(2022)

監督:アマンダ・フォービス、ウェンディー・ティルビー

評価:90

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第95回アカデミー賞短編アニメ映画賞ノミネート作品『The Flying Sailor』を観た。本作は、1917年に起きた爆破事故で飛ばされた男の体験に基づく作品である。7分程度の作品でありながら強烈な一本であった。

『The Flying Sailor』あらすじ

Inspired by true events, the highly anticipated new film by Oscar-nominated duo Wendy Tilby and Amanda Forbis is a meditation on a sailor’s unexpected voyage.
訳:オスカーにノミネートされたウェンディ・ティルビーとアマンダ・フォービスのコンビによる待望の新作は、実際の出来事から着想を得て、ある船乗りの思いがけない航海を描いた瞑想作品です。

IMDbより引用

走馬灯/肉体/精神

船乗りがタバコを吸いながらフラフラと歩いていると、船同士がぶつかる事故を目撃する。タバコを吸う彼。嫌なことが起こる数秒前の、逃れることのできないでもゆっくりと流れる時間を捉える。本作は、致命的な事故における走馬灯を肉体と精神の関係から紐解いている。走馬灯を見る時、時間の流れが遅くなる。その間を埋まるように、過去の断片が注ぎ込まれる。この「遅さ」と「早さ」のミキサーの中で彼の服が剥がれ落ちていく。そして、走馬灯の波の中、男はイメージ上の大空へと飛び出し、やがて宇宙へと迷い込む。

しかし、爆破して飛んだ空には落下する。その落下はイメージ上では宇宙の彼方から地球へと落ちる運動へと弛緩される。ある種仮想的運動によって、肉体と精神の乖離から再び密着した状態へと引き戻されて、男は救われる。

7分程度の作品でありながら、セリフなしで、走馬灯の中の肉体と精神の関係性を紐解いたユニークな作品であった。

本感想は、作業配信中に完成させました▼

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※IMDbより画像引用