『COME HERE』アンニュイなあの日をもう一度

カム・ヒア(2021)
COME HERE

監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
出演:シラート・インタラチョート、Waywiree Ittianunkul、アピニャ・サクジャロエンスクetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

タイの注目監督アノーチャ・スウィチャーゴーンポンが第71回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品していた『COME HERE』を観た。タイのアート映画監督はアピチャッポン・ウィーラセタクン監督もそうだが、時空を扱う人が多い。アノーチャ・スウィチャーゴーンポンも例に漏れず『ありふれた話』、『暗くなるまでには』で時空を操る映画を放っていた。今回もその傾向を引き継ぐ作品であった。

『COME HERE』あらすじ

Four young travelers embark on a trip to Kanchanaburi to see the museum, but pass the time in other ways when they find out it’s closed for refurbishment.
訳:4人の若い旅行者は、この博物館を見るためにカンチャナブリーへの旅に出るが、博物館が改装のために閉鎖されていることを知り、別の方法で時間をつぶすことになる。

IMDbより引用

アンニュイなあの日をもう一度

電車の中、どこか懐かしさを覚える電車のある空間を収める。そこに鉄骨の音が響き渡る。次の場面では、上下に分割された画が提示され、上は森林、下は改装工事中の様子が映し出される。まさしく静と動の関係だ。4人の男女が観光にやってくるも改装工事で行きたい場所に行けず、アンニュイとしたバカンスのパートと、なぜか女性が森の中でボロボロになる場面。そして、セットを組みたたて、花火を見るひと時を再現するパートが複雑に交差していく。一見、交わりそうもないそれぞれのパートは動物の真似によって結び付けられていく。

正直、背景が分かりにくいのでアノーチャ・スウィチャーゴーンポンの作品の中で飲み込み辛さは段違いだ。しかし、セットの中で花火を眺める眼差し、感傷的な電車の揺らぎ、クールな二画面演出が印象的で心に残る。

本作は写真美術館の特別上映で紹介されるかどうかの難解タイ映画ではあるが一見の価値があります。

アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督作記事

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