『サラリーマン物語 新入社員第一課』世にも恐ろしい産業スパイ

サラリーマン物語 新入社員第一課(1962)

監督:井田探
出演:山田吾一、清水まゆみ、松尾嘉代、青山恭二、森川信、由利徹etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime Videoには聞いたこともない昔の日本映画がたくさん配信されている。何気なく日活映画『サラリーマン物語 新入社員第一課』を観たら、これがとても面白かった。

『サラリーマン物語 新入社員第一課』あらすじ

太洋化学株式会社の入社試験場に社長が姿を現したとき、堀川、沖野の二人の受験生が立ち上がり、社長に自分の売り込みを始めた。人事課長が慌てふためく中、社長の吉川は悠然と頷いていた。二人が派手な売り込みをやっている隣で黙々と問題用紙に取り組む太助。三人は、無事に面接試験までたどり着くが…。

日活サイトより引用

世にも恐ろしい産業スパイ

本作は俗なエンターテイメント映画であるが、その手数、映画という運動を魅せる娯楽の利を最大限に活かしている作品である。試験会場で、試験を受けるものと監視する者がアニメのようにぐにゃっと顔を変えていく。扉に寄りかかっている人が、扉のオープンと共に後ろに転げ落ちていく。男が女に絡みつくのを払い除ける。男が頭をテーブルに激突させたかと思うと焼き鳥を咥えている。怒りに任せてポストに張り手を食らわせるとあり得ない壊れ方をする。暴走新入社員の有り余る力によって破壊的な運動が行われる。ゴルフの練習パートでは同時に複数のアクションが一つの画に収められる。故に映画を観た快感に包まれている。

また、よくサザエさんで波平のデスクががらんとしている様子がネタとしてTwitterに回るのだが、本作を見ると1960年代の会社のデスクってガチで電話と書類ぐらいしか置いていないことがよく分かる。半世紀以上先の世界ではそれは異常に見える光景であろう。変わらぬ時間線による違和感といえよう。

さて話は物騒である。今であれば速攻でYahoo!ニュースになりSNSで大炎上するであろう。ある青年が化学工場の男に囁かれ、太洋化学株式会社の営業をやりつつ案件を横流しにするのだ。完全に産業スパイである。この青年がこれまた星野源に似ていて、弱々しく振る舞うのだが、やっていることが凶悪で面白い。

70分くらいで楽しめる作品なので是非!

※日活サイトより画像引用