【ネタバレ】『パリピ孔明』堅実なビジネス書アニメ

パリピ孔明(2022)

監督:本間修
出演:四葉夕卜、小川亮
出演:置鮎龍太郎、本渡楓、福島潤、千葉翔也、山村響etc

『パリピ孔明』あらすじ

あの諸葛孔明が!なぜか渋谷に!!まさかの転生!!! 渋谷で出会った月見英子の歌に心を奪われた諸葛孔明は、英子の軍師として仕える。そして・・・。 天才軍師の圧倒的無双を誇る知略計略が音楽シーンに新たな伝説を誕生させる。 原作はヤングマガジンまで勢力拡大中の「パリピ孔明」を、まさかのP.A.WORKSがアニメ化 諸葛孔明役は、三国志のキャラクターを数々と演じてきた置鮎龍太郎。 月見英子役は、本渡楓と歌唱パートはネットで絶大なカリスマ性を誇る歌い手96猫によるダブルキャスト。 予測不能の畳み掛ける驚きの知略計略。 圧倒的な心揺さぶる音楽と歌。 溢れる爽快感と止まらない疾走感で贈る、笑えて!エモい!メンタル復活系エナジーエネルギッシュTVアニメが2022年4月5日に爆誕!Let‘s Party Time.

Filmarksより引用

堅実なビジネス書アニメ

三国志は最良のビジネス書だとよく言われる。おくりバント会長の高山洋平は中国語が分からなくても三国志の知識で中国赴任を乗り切ったと言うだけに、ビジネスマンの一般教養として三国志は重要らしい。とはいってもどうやって三国志に触れればいいのか中々分からないもの。私はここ数年、三国志の触れ方を模索していた。そんな中、アニメで三国志をやると聞いた。しかも、孔明がクラブでバイブス上げる話らしい。出オチかと思ってみたら、これが東洋経済に連載されてもおかしくないほどビジネス書のような話だった。確かに、最初の1話は出オチなのだが、回を重ねるごとに三国志のエピソードを用いて、歌手EIKOをブレイクさせる軌跡を築き上げていく。例えば、フェスの会場で辺鄙な場所を割り当てられたとする。目の前では売れっ子アーティストがライブをしている。この状態でどうやってバイブスを上げるのか?これはライブだけでなく、展示会や合同説明会にも当てはまるシチュエーションだろう。まず、状況を細かく分析するところから孔明は始める。売れっ子アーティストの舞台状況をよく観察する。すると、ステージ後方になればなるほど、なんとなく観ている人が多いことに気づく。そのお客さんを惹きつけることができれば十分、集客が見込めるのだ。そして、時をうかがい、歌をぶちかます。

また、EIKOの才能を伸ばすために孔明はラッパーのKABE太人をスカウトする場面がある。KABEを味方に引き受けるため、孔明自らラップを作り、ステージでバトルを消しかける。チャンピオンのKABEのラップは強い。しかし、孔明の独特のリズムによって、KABEの調子を崩していく。しかし、上手く勝たせていく。これにより、彼のやる気に再び火をつけていくのだ。

中盤にはライバルAZALEAが現れる。ここには資本主義に魂を売った像の掘り下げを叩きつける。音楽もビジネスだと言わんばかりに、傀儡化されていくAZALEA。売れるためにゲスな方法を取る。メンバーも良心と闘うが、気づいた時には多くの人や巨額の金が動いてしまっており、AZALEAは公のものとなってしまう。自分だけでコントロールすることができなくなり、マネージャーの指示に従う必要が出てくる悲哀が描かれているのだ。

本作はゆるくも、ビジネスの厳しさとその中でいかに壁を乗り越えていくのかを描いている。10万いいね獲得で大型フェスに出られるミッションも、Twitterを見ていれば、インフルエンサーであっても10万いいねの壁を越えるのは意外と難しい。この数字設定にリアルさがあり興奮しながら毎週観ていた。

しかしながら、最後2話はアニメだからこそ誇張表現として許されただろうが、実写映画でやられたら、現実でやられたら激怒ものであろうあまりにグロテスクな孔明の策略があった。AZALEAが金で釣ったゲリラライブを渋谷109前で敢行する。しかし、孔明は先読みして少し早く、109前でライブを実施。偽のQRコードで観客を釣っていく。それに対抗するため、AZALEAもライブを実施するのだが、陽動人員に「奴らも偽物だ」とデマを叫ばせて現場を混乱させる。そして畳みかけるようにKABE太人が観客に対して金目当てだろうと挑発ラップを仕掛けるのだ。これは、AZALEAの会社から名誉毀損で訴えられるレベルの挑発だし、観客にとっては目の前で自分の心の中を抉り、神聖化していた存在を目の前で泥の中に突っ込ませる凶悪さがある。確かに観客の中には金目当ての人もいるだろう。しかし、それでも心の中にあるだろう信仰をへし折る。これほど酷い仕打ちはないだろう。しかもトラックとトラックで挟み撃ちにすることで逃げ場すら作らない。リューベン・オストルンド映画並みの意地悪さに発狂しました。

とはいえ、全体的に胸熱なサクセスストーリーで最後まで感想することができました。シーズン2もあれば楽しみであります。