『恋は光』光は恋だと思っている男は、高純度な「恋」に出会った

恋は光(2022)

監督:小林啓一
出演:神尾楓珠、西野七瀬、平祐奈、馬場ふみか、伊東蒼、宮下咲、花岡咲、森日菜美、山田愛奈、田中壮太郎etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

TwitterのTLや映画呑み仲間のグループ内で盛り上がっている『恋は光』を観てきた。特に予告編もあらすじも調べないで行ったのだが、驚いた。恋のオーラが見える男の物語だったのだ。何を隠そう、わたしは他人のオーラが見えるのだ。具体的には、色として見えるのである。中学生の頃は割と強烈だったため、人と目を合わせるのが困難だったのだが、今は慣れている。しかし、時たま見えてはいけないものが見えたりして恐怖に震える時がある。ある時、いつもは木漏れ日差し込むような明るい緑のオーラを纏った者が、土色のオーラを纏っていて違和感を抱いたことがある。後日パートナーと別れていたことが判明し、背筋が凍った。さて、そんな私が恋の光が見える男の話を観たらどうなるのか?語っていくとしよう。

『恋は光』あらすじ

集英社「ウルトラジャンプ」で連載された秋★枝の同名コミックを、「彼女が好きなものは」の神尾楓珠主演で実写映画化。「恋をしている女性が光って見える」という特異体質の大学生・西条は、自身は恋愛とは無縁の学生生活を送っていた。ある日、彼は「恋というものを知りたい」という文学少女・東雲に一目ぼれし、恋の定義について語り合う交換日記を始める。西条にずっと片思いしてきた幼なじみの北代は、そんな2人の様子に心をざわつかせる。一方、恋人がいる男性ばかり好きになってしまう宿木は、西条を北代の彼氏だと思い込んで猛アプローチ。4人は奇妙な四角関係に陥っていく。ヒロイン・北代を「あなたの番です」「孤狼の血 LEVEL2」の西野七瀬、東雲を「10万分の1」の平祐奈、宿木を「糸」の馬場ふみかが演じる。監督・脚本は「殺さない彼と死なない彼女」の小林啓一。

映画.comより引用

光は恋だと思っている男は、高純度な「恋」に出会った

大学生・西条(神尾楓珠)は、恋にときめく者の周りに光の粒子が見える能力を持っていた。そんな彼を理解している幼馴染・北代(西野七瀬)、恋のメカニズムについて知りたがっている東雲(平祐奈)、恋人のいる男性に恋をし関係を壊そうとしてしまう宿木(馬場ふみか)が変わるがわる現れては「恋とは何か?」を議論していく。経験則から光は恋だろうと認識している西条は彼女たちの光に狼狽しつつも付き合っていく。しかし、やがて自分が認識できていない光の存在を知ることととなる。哲学とは、既知のことを批判的に捉え、解体/再構築することで新しい視点を得る作業だ。この恋愛哲学は、他人にはない恋の可視化能力を持つ男が、その能力故に盲目となっていた「恋」の存在を認知し、それをもとに「恋は光」だと再定義するプロセスを描いている。

小林啓一監督は中盤に決定的瞬間を設けており、それが鋭利である。それは、西条の能力が万能でないことが証明されるシーンである。見る側の人間が見られる側に立ち、その見られているものを視認することができない。これにより自分がいかに盲目かが突きつけられ、小説や自分の能力で知った気になっていた「恋」に対して深みに入っていく。確かに、自分の色に関しては不安定で直視できなかったり、オーラを見ることはできるがその強烈さから目を背けながら見る、つまり事象を直視できていないことがある自分にとって、この理論には共感を抱く。

正直、恋愛についてどうこうにあまり関心がないため、物語自体にはそこまで入り込めなかったものの、特殊な状況に対する眼差しが真摯で面白い講義を受けた気になった。

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※映画.comより画像引用