『チーム・ジンバブエのソムリエたち』真の敵はデ・ニーロ似のフランス人コーチ!

チーム・ジンバブエのソムリエたち(2021)
Blind Ambition

監督:ロバート・コー、ワーウィック・ロス

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ドキュメンタリー映画に詳しい仲間から以前教えてもらったジンバブエ人が『クール・ランニング』みたいなノリでワインのテイスティング大会に出場するドキュメンタリーが日本にやってきました。しかも明らかにNHKの世界のドキュメンタリーでひっそり放送されて終わりそうなところ、劇場公開まで辿り着きました。これは観るしかとシネマカリテに行ってきました。

『チーム・ジンバブエのソムリエたち』あらすじ

ワインのない国からやって来た4人の難民が世界最高峰のブラインドテイスティング大会に挑む姿を追ったドキュメンタリー。

ジンバブエ共和国から難民として南アフリカへ逃れた4人の男性が、フランスで開催される「世界ブラインドワインテイスティング選手権」にソムリエとして初参戦することに。家族や祖国への思いを胸に乗り込んだ彼らを迎え撃つのは、「神の舌を持つ」と言われる23カ国の一流ソムリエたち。「チーム・ジンバブエ」はクラウドファンディングの支援を受けてワインの聖地ブルゴーニュへとやってくるが……。

「世界一美しいボルドーの秘密」の監督ワーウィック・ロスと製作総指揮ロバート・コーが共同監督を務め、チーム・ジンバブエのワイナリーツアーの様子や選手権の舞台裏に密着した。トライベッカ映画祭とシドニー映画祭で観客賞を受賞。

映画.comより引用

真の敵はデ・ニーロ似のフランス人コーチ!

ワインについて勉強したことがある人なら、ジンバブエ人がワインのテイスティングコンテストに出るとなった時に「ジンバブエワイン聞いたことないな?ワインベルト的にどうなんだ?」と疑問に思うだろう。ワインベルトとは、葡萄の栽培に適した地域を指すもので北緯30~50度、南緯20~40度がそれに該当する。ジンバブエの位置を確認するとワインベルトに引っ掛かっているが、Googleで軽く「ジンバブエワイン」と検索するとヒットしない。海外サイトwine-sercherの記事によれば、1960年代後半には葡萄の栽培は行われていたそうだが、1980年代の政情不安により衰退したとのこと。ほとんど輸出もされないようで、葡萄栽培ワイン製造に適した地でありながらも国際的に話題になりにくい国とのこと。

ではジンバブエ人はいかにしてブラインドテイスティングに挑むことになったのか?1980年代以降の政情不安により、ジンバブエ人は難民として世界に散っていった。南アフリカに移り住んだジンバブエ人。味覚の才能あるジンバブエ人が集まったことで、「ワインの国際大会にジンバブエ代表として出られるんじゃね?」となり挑戦が始まった。しかし、このブラインドテイスティング大会には莫大なお金がかかる。6,500ポンドもかかるのだ。クラウドファンディングで予算を集めいざイギリスに乗り込む。保守的で白人主義的なワインの祭典に爪痕を遺す旅が始まった。

ブラインドテイスティングは12本ものワインの生産国、生産地、銘柄、そして年代まで当てる必要がある。これだけ聞くと、味覚の天才が勘で当てるゲームなのではと思うかもしれない。それに「否」を唱える。本大会はロジカルなチーム戦だということが強く主張される。ワインのテイスティングは飲酒と違う。色や香り、味を細かく分析する作業なのだ。自分が主張する味に根拠を示す必要がある。そして味覚の天才ですら正確に年代まで当てられるのは至難の業だ。だからこそ、仲間と綿密に議論を重ね、より正解に近いワインを特定していく必要がある。

チーム・ジンバブエはそれぞれの歴史を抱えてこの大会に情熱を注ぐ。ある者は、移住してきてレストランでワインを注ぐが、「どれも同じじゃん。ボトル魅せて客が欲しいものを渡せばいいじゃん」と思っていた。ある時、ワインの味に触れて、そこから奥深さを知るようになった。ある者はプルーストのように味から土地の歴史が見える能力を持っており、その能力をこの大会にぶつけることとなる。ジャンプ漫画さながら友情・努力・勝利の胸熱ドラマへと発展していく。

ここで意外な敵が現れる。それはコーチのフランス人だ。ドゥニはフランスにおけるワインテイストの第一人者らしい。ロバート・デ・ニーロに似た顔を持つ男だ。しかし、傲慢で人に嫌われることを知っていながらも開き直るような男。彼がこともあろうことか、コンテスト会場でジンバブエ人を無意識に見下し始めるのだ。「お前たちにはワインの味などわからない」と言いたげに乱暴な指示を出してきたり、コンテストのルールを理解していないような振る舞いを始めるのだ。劇映画だったらあまりに唐突な闇堕ちっぷりに荒れる展開となるだろう。これはドキュメンタリーだ。現実をありのまま映す側面がある。

思わぬ急展開に最後までハラハラドキドキさせられた一本でした。
※映画.comより画像引用

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