【MUBI】『Il n’y aura plus de nuit』彼らに明日はない

Il n’y aura plus de nuit(2020)
There Will Be No More Night

監督:Éléonore Weber

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

MUBIに気になっていた映画『Il n’y aura plus de nuit』が配信されていた。本作は、ヘリコプターの暗視カメラのアーカイブを繋ぎ合わせた作品であり、映画ポスターがあまりにカッコいいので昨年のベストポスターに選出した。実際に観てみると非常に怖い作品であった。

『Il n’y aura plus de nuit』概要

To shoot: a gun or a movie camera. The military analogy is born with the beginning of cinema. Eléonore Weber’s (Les Hommes Sans Gravité, IndieLisboa 2008) documentary is exclusively based upon footage recorded by French and American soldiers in Iraq, Syria and Afghanistan. From the top of their helicopters, a viewfinder scans the night and watches for suspicious activity from moving heat dots. They have the power to take or keep lives.
訳:撮影する:銃や映画カメラなど 軍隊のアナロジーは、映画の始まりとともに生まれました。Eléonore Weber監督(『Les Hommes Sans Gravité』IndieLisboa 2008)のドキュメンタリーは、イラク、シリア、アフガニスタンでフランスとアメリカの兵士が記録した映像にのみ基づいています。ヘリコプターの上からファインダーで夜空を見渡し、動く熱線から不審な行動を監視する。彼らは、命を奪うことも守ることもできる力を持っている。

IMDbより引用

彼らに明日はない

暗視カメラで不鮮明ながらも、標的の存在を確実に捉える。人がトラックの周りで会話をしているかと思うと。ダダダッと銃撃される。確実に人は死んだであろう。しかし、その死に至っては不鮮明で見えない。見えるのは、トラック等のオブジェクトや動く人である。静止したり、爆裂した人体を暗視カメラは捉えることができない。暗視カメラにより人命が軽くなっていく様子を観る者に追体験させ、どんどん居心地の悪いものとなる。なんといっても、トラックを銃撃し「やったか?あのトラック怪しくねぇか?」と話し声が聞こえる。すると、トラックの影から這うようにして人が出てくる。すると容赦無く爆破するのだ。あまりにも無慈悲だ。強烈な銃撃のアーカイブ映像は、反復して挿入される。恐怖がフラッシュバックするようにまたも惨劇が眼前に広がる。

そのような恐怖の後に、民家を映す場面が来るのだが、これがまた強烈である。団欒としている庭。人は飛行物体の存在に気づき、手を振る。だが我々は知っている。暗視カメラから、人々を監視し、敵だと判断される前に駆逐する邪悪な存在であると。丁寧にも、地上から飛行物体を捉える様子。それも子どもが無邪気に遊ぶショットも挿入される。



フル・コンタクト』、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』と2010年代後半に、この手の爆撃を描いた作品が幾つかあったが、現実における恐ろしさを徹底的に観客に突きつける問題作であった。

※MUBIより画像引用

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