『RRR』銃弾に撃たれる価値すらない俺ら/私らの憤怒、蜂起、革命の咆哮

RRR(2022)

監督:S・S・ラージャマウリ
出演:N・T・R・ラオ・ジュニア、ラーム・チャラン、アーリアー・バット、アジャイ・デーヴガン、レイ・スティーヴン、ソンアリソン・ドゥーディ、オリビア・モリスetc

評価:80点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

『バーフバリ』で知られるS・S・ラージャマウリ監督最新作『RRR』を観てきた。S・S・ラージャマウリ監督作に登場するキャラクターはどれも濃く、ソシャゲとコラボしてもおかしくない程だが、本作に関してはソシャゲの演出かなと思うような描写もあり、より一層大迫力な作品であった。一方で、イギリス統治時代の怒りを全面に出した内容でもあった。

『RRR』あらすじ

日本でも大きな話題を集め、ロングランヒットとなった「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督が、英国植民地時代の激動のインドを舞台に、2人の男の友情と使命がぶつかり合う様を豪快に描くアクションエンタテインメント。

1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。

「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.がビーム、ラージャマウリ監督の「マガディーラ 勇者転生」にも主演したラーム・チャランがラーマを演じた。タイトルの「RRR」(読み:アール・アール・アール)は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。

映画.comより引用

銃弾に撃たれる価値すらない俺ら/私らの憤怒、蜂起、革命の咆哮

本作は、英国に「モノ」として扱われるインド人による革命を描いている。英国とインドとの経済格差の象徴として銃弾が使われるのが興味深い。少女誘拐事件が発生する。母親は英国の車を止めて、娘を返すように説得するが、英国軍側の兵士が銃を向ける。しかし、上司と思しき存在がこの銃弾を作るのにどれだけのコストが掛かっているんだと怒る。つまり、このインド人は銃弾1個の価値にも満たないのだ。しかし、インド人が蜂起すると銃弾が発砲される。群れをなし、存在感を出すことでインド人としての価値を高め、英国から価値を奪い取ろうとするのだ。そして、英国人の心臓を銃弾で貫くことで価値の逆転を引き起こそうとする。

さらに、エネルギーとしてインド人を蓄え消費する英国人に対して、無数の野生動物と共に襲撃する場面では、エネルギーとして蓄えられてしまった自然を本来の状態に戻す、つまり自然による逆襲のイメージを強固なものにする描写として機能している。もちろん、理屈抜きにしても『バーフバリ 王の凱旋』からパワーアップした縦横無尽に殺戮が飛び交う中での火属性と水属性のぶつかり合いは惹き込まれるものがある。

なんといっても、本作は人間にはこんな動きが隠されていたのかと思う描写の連続が面白い。序盤の、1対何百人の人海バトルはもちろん、中盤の肩車アクション、馬鹿らしくもその馬鹿らしさでどこまでできるのかを突き詰めている。その結果、アクションが物語る状況が生まれ、サイレント時代のような画が映画を推進させる快感に満ち溢れており、例え音がなくなっても十分成立する作品に仕上がっている。

3時間に及ぶ業火、激流のスペクタクルは開いた口が決して閉じることなく気が付けば終わっている代物であった。

※映画.comより画像引用