『Benedetta』ポール・バーホーベン流、信仰風刺画

Benedetta(2021)

監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演:シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソン、ヴィルジニー・エフィラ、Daphne Patakia、オリヴィエ・ラブルダンetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されたポール・ヴァーホーヴェン最新作『Benedetta』を観ました。本作はジュディス・C・ブラウンの小説『ルネサンス修道女物語 聖と性のミクロストリア(Immodest Acts: The Life of a Lesbian Nun in Renaissance Italy)』の映画化であり、製作時から話題になっていた作品だ。エロ、グロ、ナンセンスの鬼才ポール・ヴァーホーヴェンが撮る修道院もの。蓋を開けてみたら少々厳しいものを感じました。日本公開時には、そこまでアナウンスされないと思われますが、1箇所注意しないといけない部分があります。『ラストナイト・イン・ソーホー』の騒動を踏まえ、ここでは問題の箇所は詳細に言及しますので注意してください。

『Benedetta』あらすじ

Set in the late 17th century and inspired by true events, Benedetta follows a young woman who joins a convent in Pescia, Tuscany as a plague ravages the land that surrounds it. Capable of performing miracles from an early age, Benedetta’s impact on life in the community is immediate and momentous.
訳:17世紀後半、トスカーナ州ペシアの修道院でペストが発生し、修道院に入った若い女性の物語。幼い頃から奇跡を起こすことができたベネデッタは、地域の生活に大きな影響を与える。

※MUBIより引用

ポール・バーホーベン流、信仰風刺画

17世紀トスカーナ州。修道院にて生活するBenedetta(ヴィルジニー・エフィラ)は幼少期から不思議な体験を繰り返してきた。盗賊団らしきものに囲まれた時、鳥がフンを盗賊の一人にふっかけ難を逃れた。彼女が祈りを捧げると、像が倒れてきて下敷きになる。また突然神が現れて「来なさい、あなたは私の妻だ!」と言ってきたりと怪奇現象が次々と起こる。それ故、彼女は神の存在を信じている。

ある日、修道院に一人の女が助けを求めにやってくる。羊飼いの男に虐待を受けているBartolomea(Daphne Patakia)だ。暴力的な男が、彼女を連れ去ろうとし、「助けて」というが、修道女は「あんた金ある?ないの?じゃあダメだ。」と言い始める。なんとかそれを阻止して彼女を修道女として預かることになる。Bartolomeaの世話をすることになったBenedettaは段々と幻覚との間で淫乱を行うようになっていく。

本作は、修道院に入れるか否かはお金の問題だとか、ジャンヌ・ダルク映画のクリシェである火刑シーンを捻ることで信仰や社会の欺瞞を暴こうとしている。しかしながら、ポール・ヴァーホーヴェン監督がドヤ顔で「これナンセンスだろう。」と強烈な描写を見せびらかしてくるのがキツい作品だ。そのどれもが薄いものであり、ただれた乳房や女性同士の過剰な性行為場面はあまり意味をなしてないように見えた。

そしてここは事前に言わないといけない。Benedettaが幻覚の中で強姦される場面がある。その強姦を止めに入った神が、彼女の乳房を切断しようとする。このシーンが観ていて非常に辛かった。やたらと神に血祭りに上げられる演出のテンションが高いこともあり、嬉々として演出されているのだが、これが特にアナウンスされずに日本公開されたら『ラストナイト・イン・ソーホー』みたいな悲劇に繋がる可能性があると感じた。カイエ・デュ・シネマが好きなのはなんとなく分かったが、Not for meでした。

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※MUBIより画像引用