絶壁の彼方に(1950)
STATE SECRET

監督:シドニー・ギリアット
出演:ダグラス・フェアバンクス・Jr、ウォルター・リラ、ジャック・ホーキンス、グリニス・ジョンズ、ハーバート・ロムetc

0.1 評価:90点

1 『絶壁の彼方に』あらすじ
2 独裁国家で手術したら首相を死なせてしまった話
3 ジュネス企画映画記事

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Amazon Prime Videoでは昨年秋ごろからジュネス企画のレアなクラシック映画が大量に配信されている。これにより「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソンも大分楽になった。ジュネス企画映画を漁っていたら面白そうな映画を見つけた。独裁国家に招待された医師が、大統領の手術をする羽目となり挙句に殺してしまう。そこからどうやって逃げ出すかを描いた作品。ヒッチコック映画を思わせる修羅場映画なのだが、監督は彼の『巌窟の野獣』や『バルカン超特急』の脚本を手掛けているシドニー・ギリアットであり納得だ。というわけで観てみました。

『絶壁の彼方に』あらすじ

アメリカの著名な外科医ジョン・マーロウ博士（Ｄ・フェアバンクス・ジュニア）は、ロンドンに旅行している間、東国のヴォスニア国から彼の功績に対して賞を贈り、且つ公開手術を行って貰いたいという要請を受けた。ヴォスニアは政治的に西欧諸国と対立している独裁国なので、マ一ロウはためらったが、学問と政治とは別問題であるとひとり同国へ旅立った。国賓的な歓迎を受けた彼はいよいよ手術に取かかったが、偶然患者が他ならぬ同国の独裁者ニィヴァ首相（Ｗ・リラ）であることを知ってしまった。手術の結果は良好だったが、国家機密を知られた同国のガルコン大佐（Ｊ・ホウキンス）は直ちにマーロウを檻禁同様に拘束した。そのうちに首相の容態は急変し、マーロウの努力にも拘らず、彼は死亡した。死の秘密を知るマーロウは、白分の命さえ計り難くなったことを知り、ついにガルコン大佐の許を脱出して、追手の眼を眩ましつつ、ある寄席劇場に逃込んだ。そこにいた女主人の英国ハーフのリザ（Ｇ・ジョンズ）を語らい、彼女を伴って様々のスリルを味いながら、二人は国境近くの山へかくれた。しかしガルコン大佐の手は迫り、ついに二人は逮捕された。がこの時、首都ではニィヴァの替玉が暴徒のため暗殺され今やその死が公然のこととなったニュウズが伝わった。間一髪で二人は国外へ退去するチャンスを得た訳である。

※映画.comより引用

独裁国家で手術したら首相を死なせてしまった話

独裁国家から脱出する羽目となった外科医ジョン・マーロウ博士（ダグラス・フェアバンクス・Jr）の回想から始まる。彼の迷いを観客と共有するため、回想シーンではマーロウの主観で撮られている。突然、彼の前に手紙が届き、ヴォスニア国から役人が現れる。どうやら自分の功績が他国で称賛されているようだ。そして急な誘いに迷いつつも、ヴォスニア国へ公開手術しに赴く。独裁国である為、異様な雰囲気に包まれている。そしていざ、手術。しかし、どうも助手たちが目をキョロキョロさせ、ヴォスニア語でヒソヒソ話をしていて怪しい。

「患者の顔を見せろ!」

そう叫び、恐る恐る布を取ると、独裁者ニィヴァ首相だった。逃げるも逃げられない状況になった彼は、なんとか手術を成功させようとするが、その努力も虚しく死んでしまう。命の危険を感じた彼は、施設から飛び出し決死の脱出を図る。

本作は、ヒッチコック映画さながらの修羅場修羅場の釣瓶打ちが楽しめる作品となっている。そして、その演出に光るものがある。例えば、言葉に着目してみる。アメリカ人であるマーロウはヴォスニア語は全くわからない。彼が群衆に紛れながら逃げているとすぐ近くに軍人がいたりする。そして何やら話し込んでいる言葉の中に、「…アメリカ」と聞き取れる言葉が混ざってくる。これにより危機がすぐそばにまで迫っている恐怖を与えることができる。

また、序盤はカーチェイスや銃撃する軍人から逃げる水平のアクションが展開され、その中で地下の床屋に逃げるした方向のアクションを交える。それを踏まえて、終盤では絶壁という上方向のアクションへと持っていく。逃げ場を失った者は壁を登らざる得ない背水の陣を上手く描いているといえる。絶壁でのアクションは、足の踏み場もないような崖をよじ登り、上からの狙撃を回避しながら地を這うようにゴールを目指す手汗握るアクションにハラハラドキドキさせられる。

安心したのも束の間、思わぬ結末を迎える意地悪さも含めて、壮絶な逃避行譚に仕上がっていた。クラシック作品故、なかなか多くの人に注目されない作品だが、本作含めジュネス企画映画は面白い作品の宝庫である。2022年はこうした作品も積極的に紹介していきたらと思う。