「ディズニー・オン・アイス2022」同時多発するアクションが全観客に興奮を伝える

「ディズニー・オン・アイス2022」同時多発するアクションが全観客に興奮を伝える

最近、映画以外のエンターテイメントを通じて映画を観る新しい視点を見出そうとしている。YouTuberの動画、VTuberの動画を研究しているのはその一環である。さて、先日3年ぶりの開催となった「ディズニー・オン・アイス2022」を観てきた。これはミッキー・マウスやバズ、ジーニー、オラフなどといったディズニー/ピクサーキャラクターがスケートリンクで展開するスペクタクルだ。そもそもアイススケートをまともに観たことがない。果たしてどんな感覚が開花するのかワクワクしながら国立代々木競技場へ行ってきました。今回はその感想を軽く書いていきます。

ディズニー・オン・アイス2022概要

ディズニーの人気者たちが登場し、世界レベルのフィギュアスケーティングによってディズニーストーリーの夢の世界をお届けする「ディズニー・オン・アイス」が待望の再開!今回は、日本公演35回目を記念した特別な作品をお届けします。

海賊たちに捕らわれたティンカー・ベルをさがすため、ミッキー、ミニー、ドナルド、グーフィーが地図を頼りに、「美女と野獣」、「リトル・マーメイド」、「アナと雪の女王」、「アラジン」といったさまざまなディズニーストーリーの世界へと旅に出かけます。

ディズニー・オン・アイスでは初となるプロジェクションマッピングを駆使した舞台セットで各作品の世界観を今まで以上にリアルに表現。会場中が魔法に包まれた、記念すべき35回目の特別なショーをお楽しみください!

公式サイトより引用

海賊が縦横無尽にスケートリンクを駆け回る。事前録音されたセリフに合わせて、オーバーアクションを繰り広げていく。観客は広大なステージで同時多発するアクションを追っていく必要がある。それはスケーターの、舞いに留まることを知らず、背景に映し出される映像も重要となってくる。最初の大団円ではMCの男女に合わせて、ミッキー、ミニー、ドナルド、グーフィーお馴染みの仲間が駆け巡る。それを盛り上げるように、たくさんのスケーターが出てくるのだが、セグウェイが逆走していたり、トランポリンで曲芸をする者がいる。到底じゃないけれど全てを追うことは不可能だ。映画のように決まったフレームに、役者を押し込めているが故の有限な情報量とは違う。そこには無限の情報があり、観客は凝視することでスペクタクルに没入する。だから、どの座席に座っていてもそれぞれの物語が醸造される。興奮が生み出されるのだ。ではこのスペクタクルの興奮は観客任せなのか?

空間作りに関しては「否」である。

私の座った座席は、ステージの真横であった。つまり中央付近に鉄骨があるのだが、スケーターはそこに被らないようにしているのだ。なので、二画面で異なるアクションを見せているような気分にさせられる。左側では円形のアクションをしている。右側ではティンカーベルがそれを観ている空間があるのだ。

さて、最初の大団円が終わると物語は、囚われたティンカーベルのために様々な世界に入っていく。これにより『美女と野獣』や『リメンバー・ミー』、『アナと雪の女王』などといった世界観が紡がれていく。特にすごかったのは『トイ・ストーリー』パートだ。ウッディやバズが滑るのは当然だが、なんとブタの貯金箱であるハムや恐竜のレックスまでもが滑るのだ。着ぐるみを着た状態でスケートリンクを爆走する。先日、ピーナッツくんのライブを観た時、着ぐるみで踊ることの体力負荷を目の当たりにしたが、その視界でまともに滑れるんだと思うほどに躍動感溢れるパフォーマンスをしていて驚かされた。群れで動くウッディたちとコミカルに作戦を実行するグリーン・アーミーメンの滑稽さに魅了された。

コミカルさに反して『美女と野獣』パートでは、重厚華麗なパフォーマンスを魅せる。ベルのドレスがクルクル回転する華麗さはもちろん。バズビー・バークレーさながら、大勢のスケーターと共にロープで回転上昇する美しさに魅了された。

終始、ステージを凝視するので、観客は疲れるであろう。途中で休憩が設けられており、その後『アラジン』、『アナと雪の女王』を畳み掛け、魔法ゲージを高めると共に、マルチバース、様々なディズニー/ピクサーキャラクターが一堂に会する場面はスケートパフォーマンス初心者の私の心を鷲掴みにしました。

演劇が観客を共犯関係に持ち込み、没入感を与える芸術だとよく言うけれども、スケートのパフォーマンスも同様のものを感じました。この感覚は今後の研究に活かされることでしょう。